連載小説|寒空の下(13)
社会的組織の中でどれだけ長く貢献しようが、方針にそぐわない行動を取っていればすぐに切り捨てられる。笠原の10年以上の労働は、たった1回の失敗で全て吹き飛んだ。やはり一人の人間など紙屑のような存在に過ぎないのだろうか。
控え室で仕事をサボり、酒を飲もうが、一度街頭に立ったならば酒は飲まないという約束で俺たちは行動していた。俺の場合、そこまで強いわけでもないから街頭に立っているときまで酒を飲みたいとは思わなかった。だが、笠原は違った。彼は呼吸をするように酒を飲んでいた。正真