【えーる】シーズン到来、鹿野の紅葉
……人口3000人を切った田舎町の道が渋滞して進めなくなるとは、思いもしなかった。
11月、晴天に恵まれた7日。実家での用事と、SNSの更新ネタを求めて周南市鹿野地域へと足を運んだ。高原の町である鹿野は、もう紅葉も始まっている時期だから、きっとすばらしい景色が見られるだろう。
そう思って、久しぶりに趣味の時間を楽しむため、車を走らせた。
国の登録記念物「漢陽寺庭園」の紅葉
あの渋滞の続く先はどこなのだろうと思っていた。
この日、鹿野地域ではイベントも行われていたので、てっきりそちらへの来場者なのかと思っていたが、どうやら狙いは紅葉だった人もいたようだ。
ここは鹿苑山漢陽寺。つい先日、この漢陽寺にある6つの庭園が、国の登録記念物として登録された由緒ある臨済宗の古刹である。
この漢陽寺庭園は、春夏秋冬さまざまな顔を見せてくれるのだが、やはり最も推せるのは秋、紅葉と共に楽しむ庭だろう。美しい庭たちを彩る紅葉は、見事の一言に尽きる。
漢陽寺の中にある6つの庭園(1つは通常非公開なので、いつでも見ることができるのは5つ)は、どれも赤の映える庭たちばかりだ。
※曲水の庭(1枚目)、九山八海の庭(2枚目)
……午後に行くことはお勧めしない。西日になると、せっかくの紅葉をまぶしさで見逃してしまいそうになる。
せっかくなら、登録記念物に指定された庭たちとともに楽しみたい。青空が見えれば、なおさら赤が映えてくれる。
だが、こういう景色も見てほしい。
漢陽寺の裏側に掘り抜かれた用水路である「潮音洞」の付近に咲く紅葉の何が素晴らしいかと言うと、磨き抜かれた縁側の床板に、その赤が反射してうっすらと赤がさすのだ。青のない、ただただ赤色を楽しめる空間というのも趣があるものだ。
皆さまは、青空に映える赤と、赤に埋め尽くされた空間。どちらがお好みだろうか?
平成の名水百選「清流通り」の紅葉
たっぷりと漢陽寺の紅葉を堪能して、流れ出る清水を追いかけて寺の外へと足を運ぶと、清流通りを歩くことができる。
農業用水として360年以上も利用され続けている水の流れを足元に見ながら歩いていくと、水車小屋が見えてくる。山口県の詩人・種田山頭火の句碑と共にたたずむその小屋の周囲は、緑と赤の混じり合った色とりどりの光景が広がっている。
晴天の下、散策の火照りを冷やすのにぴったりな涼しい風を感じながら歩くのは、心地よいばかりだ。夏のギラギラとした焦げ付くような日差しの中でもなく、冬の痛みさえ感じる冷気の中でもない、ちょうどよい心地よさが広がる道を歩けるだけで、気持ちが穏やかになってくる気がする。
14日もまだまだ見頃?
漢陽寺でお話をうかがうと、来週14日ぐらいが紅葉のピークらしい。
この記事をご覧いただいた皆さまも、自分と同じものを、よりよい状態で味わえる可能性がある。自然のことは人にコントロールできるものではないが、まだ今秋は紅葉狩りを楽しめる見込みがありそうだ。
この記事をご覧になっている方は、山口県にお住いでない方が大半であろうが、もし余裕があれば、お近くで心当たりのある場所へと足を運んでみるのもいいかもしれない。
きっと、鮮やかな赤色が、あなたを迎えてくれることだろう。