あえて外した桜の季節 金峰地区、一面の緑
山口県周南市の北部、山間に位置する鹿野地域。
この鹿野各地を会場に、参加者が丹精込めて造った庭たちを公開し、交流人口を生み出そうという催し「里山オープンガーデン2022」は、5月末まで開催中です。
その会場の1つである「金峰の里」を、4月も終わりに近づいた23日に訪れました。
山深く、春の訪れも遅い金峰地区ですが、4月も下旬となればもう桜の花もなく、一面の緑が広がる田舎の風景を目にすることになりました。
桜の名所として名高い、奈良県吉野山のような桜の里を、金峰地区につくりたいという思いで活動する「防長の吉野をつくる会」の皆さんが約3,000本の桜を植えている金峰地区。
その桜が葉桜になった時期に訪れるということは、いわば、旬を外した時期ということになります。
しかしながら、そういう時期に訪れたからこそ、見えてくるものがあると思いました。
まぶしい緑
目に見えるものも、桜の花が咲き誇る時期とは、大きく違っていました。
目に入るのは、ただただ緑、緑、緑……花の時期が過ぎ、5月を目前にしたこの頃になると、木々の緑が強まってきているのを感じます。
そんな金峰地区にやって来て、いっぱいに広がる緑を目にして、「金峰は桜だけじゃない。緑の金峰も、ほんとにきれいだな」……第一に、そんな思いが浮かんできました。
花に彩られた様子も素敵ですが、緑一色に染まった様子も、なかなかに見ごたえがあるなと感じました。
フジバカマの庭に現れたデッキ
金峰の里の見どころは、桜の木だけではありません。
10月になると、旅するチョウ「アサギマダラ」が寄ってくるフジバカマが満開になる場所も見どころの1つなんです。
10月になれば一面のフジバカマが咲くこの場所には、いつの間にか、デッキが造られていました。
「防長の吉野をつくる会」facebookによると、金峰の里を訪れた人から、道が人で渋滞してしまうので、通路を作ってほしいという要望があったそうです。
要望に応えるべく通路の整備をする中で、展望デッキを設けることを計画され、順路の一部として令和4年2月に完成したデッキなんですよ。
ちなみにこのデッキ、お一人で造られたもののようです。すごい!
ベンチに腰掛け、持ってきたコーヒーを楽しみながら、アサギマダラが乱舞する様子を、デッキから眺める……想像しただけで、ワクワクしてくる光景ですね。
嗅覚 草刈りの際に
カメラを持って金峰の里を歩いていると「ブゥーン」という、草刈り機のエンジン音が聞こえてきました。
その音と同時に漂ってきた、草をちぎった時に感じるにおい。
草刈りによって傷ついた植物から発する香りが、ちょうど行われていた草刈りのおかげで、周囲に漂っているのでした。
緑の香り(GLVs)というこの香り。いわゆる青臭いにおいは、草が傷つけられたときに発生する化学物質によって生じるにおいです。
この音、そしてにおい。このにおいや音が、いま、鹿野にいるんだな、ということを感じさせてくれます。
都会では感じることのできない、田舎ならではの香り。
運よく草刈りの現場に居合わせることができたなら、ぜひ感じてみてほしい香りです。
聴覚 せせらぎの音
草刈りの音に混じって、水の音も聞こえてきました。
思わず、目を閉じてゆっくりと聞いておきたくなるような、心地よい音。緑の中で聞こえる、せせらぎの音に、少しばかり驚きました。
以前この場所に桜を見に来ていた時や、アサギマダラを楽しんでいた時には、そちらばかりに目を奪われて、気付かなかった水の音。
しかも、フジバカマの咲く庭の本当にすぐ近くにあるなんて。
ちょっと高低差があり、足元には注意する必要がありますが、ぜひ近くに来たときは立ち止まってみてください。
音だけを楽しみたいなら、目を閉じてみてもいいかも。
里山は静かな印象がありますが、たくさんの音を感じることができました。
旬だけが、全てじゃない
桜、フジバカマ、アサギマダラ……たくさんの色にあふれた金峰の里。
もちろんそれが、大きな魅力であることは間違いない事実です。
しかしながら、この場所の魅力は決してそれだけではない、ということを再度確認することができました。
まぶしい葉桜の緑、自然の中だからこそ感じる香り、水の流れる音……写真で伝えられることは残念ながらごくわずかですが、現地を訪れて、目だけでなく、耳や、肌でも、山里の魅力を感じてくれるとうれしいです。
でも、桜も見たいですよね
……とはいったものの、やっぱり魅力的な桜たち。
これは昨年の3月末に撮影した金峰の桜ですが、間近で見る、ほんのりと色づいた桜は、やっぱりすてきです。
3月に訪れた時は、桜もですが菜の花の黄色も、とても目を惹きました。
まだ緑よりは花の色の方が強い3月から、たった1カ月程度で大きく様変わりする金峰の里。
訪れるたびに、違う顔を見つけることができるんじゃないかな、と思います。