ふくわらい(西加奈子さん)

西加奈子さんの 「ふくわらい」。

ありきたりな言い方だが 素晴らしい作品。

読んでたら「忘却のサチコ」というドラマを思い出した。似てる。

海外生活をしていたからなのか、前世の記憶なのか、私が異性として魅力を感じるのは白人だけ。
もちろん日本人の男性と微妙な関係だったり付き合ったり、結婚しそうになったり、3股かけられた事もある。

33になった年、何度もタイミングをのがして、でも行ってみたくてたまらなかったイギリスにやっと住むことができた。
到着して1ヶ月くらい、友達ができるより先にイタリア人の彼氏ができた。3ヶ月くらいで別れざるを得ない状況になってしまったのだが、私は彼のことがおかしくなりそうなくらい好きでたまらなかった。

彼と別れてから 特に白人以外の男性、特に日本人に異性としての感情が湧かなくなった。
引きずってる時間が嫌なのに忘れられない自分がもどかしくて、人生の中で一番人数多くいろんな人達とデートした時期だった。
みんな白人男性。 別れてすぐ出会ったのも背の高いイタリア人で、
元彼と違うところは、目が青いブロンド、左腕にタトゥーが入ってて、ムキムキ。胸毛が濃いけど、ジャスティンビーバーっぽいような整った顔立ちだった。

お互い、「付き合おう」という確認はしなかったけど、そいつが唯一 恋人同士のようにデートして泊まって くだらない事で喧嘩して嫉妬したりもしてた。

軽はずみにキスはできても 体を許す事には今でもそれなりの覚悟を必要とする。
女性の方が、精神的な負担だったり妊娠の危険性があるからだ。
それを踏まえて一線を超えたという事は、私は本気で別の相手を見つけた と思っていた。
だけど、どこか私は上の空で、元彼を忘れるための「恋愛ごっこ」を後者の彼と楽しんでただけなのだ、と後から気づく。
あれだけ元彼と比べてたし、これがあの人だったら と思ったりもしていたのに。
気づかない事にしちゃってた方が その時は心地よかったのだろう。

最近無性に聴きたくてハマったmaroon5。昔のPVを見てたら 若い頃のヴォーカルのヒゲが綺麗に剃られてる様が元彼によく似ていて、リアルに付き合ってた頃を思い出させてくれた。

自分にはもったいない人だ と思っていた。それが失敗の元だったと思う。こんなにも魅力的な人が私の彼氏になってくれた事は奇跡なのかもしれないと思い込み、絶対に離すまいと執着した。

後に現れた、ブルーアイズ ムキムキのイタリア人は 「ふくわらい」を読んでるときに思い出した。

主人公は 盲目のイタリアと日本のハーフの男性と出会う。目の色が薄いグリーンで、愛の表現を惜しげも無く嘘くさいくらいに表現するところがそっくりで。
〝目の見えない彼を気遣い手を繋いだだけなのに、図々しく恋人繋ぎにされその手は汗で湿っている。〟
そっくりだ。

〝息荒く、出会って2回目?なのに、お尻を触って息荒くキスを迫る。「好きなんです」と微塵の恥じらいもなく口に出し、相手の都合は全く御構い無し。しかもそれを公共の場で〟
ほんと、そっくりだ。

その主人公は恋愛感情というものを体感した経験がなく、なぜお尻を触られキスを迫られているのかがよくわからずに拒否した。
私は、恋愛の痛手を負った後に出会った相手に簡単にハグされキスを迫られ、よくわからないまま拒否しなかったから恋愛ごっこになった。

反対に見えても 共通点はそこにあって、その時、私たちには相手に対する恋愛感情はなかったという事。

本を読んでいると 何かにつけて主人公を自分と似ている点を探し出して、私自身が物語の主人公になろうとする癖がある。

だが、今回の作品は 自分が透明人間になって物語の世界にお邪魔してそれぞれの生活を覗き見している気分だった。

それほど主人公の生い立ちやキャラクターが自分とかけ離れていたのかもしれないが、共感を求める癖のある読者まで引き寄せて魅了してしまう 西加奈子、おそるべし。
やっぱり彼女は 私の神様。

イギリスから帰国して、誰一人と友人には会ってないし 帰国の報告すらしていない。
新しい職場の同僚とも今後会うつもりでいたけど 退社してから一度も会っていない。
人に会う事が億劫になってきている。

億劫なはずなんだけど、西加奈子さんには 会ってじっくりと話しを聞いてみたい と、作品を読むといつも胸の奥がざわついてうるさいのだ。

そして それも、願い事のうちの一つ。ちゃんと叶えてあげるから大人しく待っとけこのヤロウ。


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