モテたいという気概を感じない
見た目を気にする青二才
入学当初、福島の片田舎から東京の大学に進学。もちろん、見た目には細心の注意を払う。
シンプルかつ清潔な身なり。髪の毛のセットもバッチリ。YouTubeで『大学生 ツーブロック セット』と調べて、何度と練習したから。
ダサいと思われたら大学生活一貫の終わり。そう何度も言い聞かせ、家を出る1時間前には起きて、身なりを整えていた。
その結果、悪目立ちすることもなく、第一印象◎だったと思う。その甲斐あって、男女数人の友人を作ることができた。否、合同課題消化班の結成、参加に成功した。
これで、大学の授業に対する不安は半減した。1人で授業についていけるなんてはなから思っていなかった。
しかし、この班には重大な問題があった。それは、お互いにお互いの情報を欲しており、結びつきが非常に強いことだ。
僕がどんな見た目をしていても、縁が切られないような人間関係を構築してしまった。
2年前期、グループが固定化されてきた頃
僕は薄々、周りの人間は見た目なんて微塵も気にしていないことに気づき始める。
髪の毛のセットをやめた。
起きる時間が家を出る40分前になる。
服装を黒パンツと白シャツに固定する。この頃から、僕は大学の知り合いたちから白シャツのイメージを持たれる。毎度毎度、白シャツの人だと言われ始める。
2年生はこのまま、服装の固定と髪の毛のセット禁止を己に課し、睡眠時間を確保していた。
3年、身なりを整えるという概念の崩壊
髭を剃るのが週に2回になった。しかも、朝ではなく、前の晩に髭を剃ってしまう。起きる時間が家を出る15分前になる。
ここまできたら、歯止めが効かない。
最近は夜寝るときに、次の日の格好をするようになる。いや、パジャマとして着ているスウェットで学校に通うようになった。
そろそろ、やばい。
毎日、髭を剃って、髪の毛をセットしていた青年は見る影もない。
手入れもしていない、ボサボサの髪をした、スウェット姿の浪人。
あまりにも、人からどう思われるだろうという、心配をしなさすぎている。どうだっていい、今日、同じ電車に乗った人とは2度と会うことはないだろう。会ったとしても、絶対に覚えてなんているもんか。
言い訳。
東京は人が多すぎる。自分を見失う。いや、薄まる。みんな、脇目も振らず目的地に早歩きで向かい、他人のことなんて気にして歩く余裕なんてない人ばっかりだ。みんな歩くのが早すぎる。
僕がこんな姿になったのは、みんなが僕を見てないからだ。まるで透明人間になった気分だよ。
上京して感じる僕の透明さ。ちっぽけさ。
どんなにおしゃれをしたところで、透明。
どんなに見すぼらしい格好をしたところで、透明。
ならば、より多くの睡眠を取るほかないのでは、という絶妙に論点をずらした言い訳のもと、今日もボサボサの髪の毛で、髭を生やした浪人は学校に向かった。
ごめんなさい。ちゃんとします。
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