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「届いていた!」の嬉しさと、諦めかけるとRHYMESTERが現れる話

先の記事を引っ張って恐縮ですが、

どうして私の作品は届かないのだろう?
一体どうすればいいのだろう?

そんなふうに考えて、袋小路に迷い込んでいたとき、こんな記事を書いてくださる方がいました。

「届いているよ!」と教えてくれた記事

私が書きたかったこと、表現したかったことが、表紙イラストも含めて、全部、伝わっていました。受け取ってくれる人は、いました。

塚本さんのXを見ると、自分で本の宣伝をすることに疲れてしまって
創作にかける気持ちよりも宣伝にかける気持ちの方に圧されてしまって
自分がやりたいことってなんなんだろうかと
なんだか悲しくなっていて
でも宣伝してくれて、文フリにも出店してくれたから
私は買うことも読むことも出来ました。
これはもう、ありがとう、としか言いようがない。

『縁側ごろごろ日和』を読んだ ~文学フリマ東京39で買った本~
てあて屋(整体師/小説を書く人)


文学フリマで販売した作品のあとがきに、私はこう書きました。

「私は同じようなことばかりを書いています。
わかりづらいと言われることがあります。
けれど、書き続けているうち、共鳴してくれる人が現れました。
受け取ってくれる人がいる。
そう知れたときの気力が満ちる感じも絶対忘れたくなくて、今日も言葉を探しています」
(貝のなかには寝床があって/塚本はつ歌 P120)

書いてるじゃん、私! 
共鳴してくれる人がいること、知ってるじゃん!

出した手紙が相手に届くのも、その返事が自分に届くのも、タイムラグがあるのは当たり前です。
メールやチャットやSNSだと瞬時に発信できるけれど、それが持つ「意味」によっては、時間が必要なものもあります。
私は「待つ力」が弱くなっていたのかもしれません。

「私の中の私」が私をぴしゃりと叱った

宣伝の効果を見るときにはどうしても「数」の話で考えてしまいます。
でも、文学フリマに参加して読者の方々とお話をすると、作品を受け取ってくれるのが「人」だということを体感します。

一人ひとり、少なくない手間とお金かけて、一冊を手にしてくれる。
そして貴重な時間を、読むことに充ててくれる。

その感謝が土台にあってこそ、上にのぼるためのハシゴをかけることができる。
忘れてんじゃないよ!

と、私の中の私に叱られました。
すみませんでした。

先のことに意識を飛ばしすぎず、足元から一歩ずつ、またやっていきます。


以上、諦めかけたけどまた書いていけそうだ、という話でした。
励ましてくれた方々、「読んだよ!」と教えてくれた方々、ありがとうございました。

それに関連してひとつ話がありまして。


諦めそうになるとなぜかRHYMESTERが現れる

私は20年におよぶ投稿生活ののち、デビューしました。
書いても書いても結果が出ないので、何度も諦めかけました。

10年以上前のとある夜も、そうでした。
新人賞の結果発表のウェブサイトに私の名前はなく、布団の中で泣きながら、求人サイトを見ていました。
当時、執筆時間を確保するためにあえて非正規の仕事を選んでいたのですが、もうやめよう、正社員の仕事を探そうと思ったのです。

そのとき、つけっぱなしのテレビからとある曲が流れてきました。
私はヒップホップをほとんど聞かないし、知識もありません。
でもそのときは、歌詞が耳に流れてきたのでした。

RHYMESTERの「ONCE AGAIN」でした。

「夢」別名「呪い」

彼らはそう歌いました。私は声を上げて泣きました。

それを知っている人たちが「ONCE AGAIN」と言うのです。

なんなんだよこのタイミング…!
励ますなよ! またがんばっちゃうじゃん!

と思いながら、求人サイトを閉じました。
その後も落選を何度も食らうのですが、36歳でデビューすることになります。

普段は聞かないヒップホップを耳が捉えたのは、「諦めたくない」と腹の底で思っていたからかもしれません。
偶然性に理由をつけても仕方がありませんが、あのとき「ONCE AGAIN」を聞いていなかったら私は就職していたと思います。

時は流れて2024年12月、私は「宣伝疲れ」の記事を書くほどに心が疲弊しきっていました。
もう無理じゃないか、とも思っていました。

どんよりしながら掃除をしているとき、ラジオからとある曲が流れてきました。
聞き覚えのある声でした。
「むむ……」
↑聞いていたのはジョン・カビラさんの番組です。ムムッ!は弟さんですけど(わかる人にはわかる)

なんなんだよこのタイミング…!
やめてくれよ! 聞いちゃうじゃん!

心が疲れているときは意地っ張りにもなるわけで、あえて歌詞を聴かずに掃除を続けました。
でも曲名だけは知りたくて、ジョンさんが曲名を言うときだけは手を止め、耳を済ませました。

その名も、

「フライヤー」

でした。
宣伝疲れしている私の耳がとらえた曲、フライヤー。

なんなんだよ! 検索しちゃうじゃん!!

フライヤー GAKU-MC feat.RHYMESTER

やめてくれよ、またがんばろうと思っちゃうじゃん!!

そのとき私はやっと泣くことができました。
コリコリに凝っていた心は、泣くことでほぐれます。
そこから回復気流に乗った感があります。

ヒップホップがわからなくとも、RHYMESTERだけは耳に入ってきます。
私がRHYMESTERの「言葉」を聞いているからだと思います。

デビュー作の「世界から守ってくれる世界」を書いているときも、RHYMESTERの曲を聞いていました。
歌詞が、主人公の薫子そのものだったからです。
校了するまでずっと聞いていたので、私の中では「ゆめのしま」がこの作品のテーマソングです。
人に話すと決まって驚かれるのですが。


諦めかけると、その道を必ずRHYMESTERに塞がれます。
そして書く道に戻ってしまうのです。
なんなんだよ(本当にありがとうございます)


何が言いたかったのかというと、

届くべき言葉は、どんな形であれ、必要なタイミングで必ず届く。

私はそれをすでに体験しているのだから、信じ続けるのだと決めた。
という、話です。

世界から守ってくれる世界(塚本はつ歌/産業編集センター)





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