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【画廊探訪 No.168】先が見えにくくとも灯をともす――松本みさこ作品に寄せて――

先が見えにくくとも灯をともす
――Gallery FACE to FAC企画 「見逃しセレクション展」
松本みさこ出展作品に寄せて――

襾漫敏彦
 愛すること、憎むこと。認めあうことのできぬ感情を己の内に抱えながら、皆、生きている。二つのものは、ぶつかりあっては、高い尾根をつくり、心の彩りとなって、いまの私の姿を支えていく。


 松本みさこ氏は、内にある心持ちを、独り工夫しては学んだ技術を組み合わせて、一幅の画として表していく。それは、様々な源流から年月をかけて流れついた砂嘴のような集積である。
 彼女は、街路をタイルで舗装するようにアクリル等を使ってもりあげた背景の上に、墨流しの技法で写しとった紙片(パーツ)を貼りつけていく。そしてあらわれるのは、欧風の装飾絵画を背景として浸み出してくる日本画の情感。それは彼女の大地の文化である。


 物事、物体、存在の中には、流れては動く変化という移ろいがある。私の中でも、許しあうことのできないものも、認めあうことのできないものも、ひとつの世界に生きている。
 水と油のように混じりあわぬものは、対立を生み、流動し、様々な乱れを生む。それは、唯一の世界の中の多くの存在を疲弊させていく。愛と憎、そして信頼と裏切り、許しあうこと、妥協しないこと、それは、せめぎ合いながら、これまで築きあげてきたものの上を流れながら一つの模様を形成する。移ろいながら、伝統の上に変化は展開する。

 対立は、とどまろうとしながらも勢いは、世界をこわすこともある。乱れても、そのままであって欲しい世界。望みが消えそうになっても守られて欲しい平和。


 過去は流れて現在の中に満ちてゆく。松本は流れて消えゆく記憶を救うように、儚なげな薄紙へと写しとる。墨や具材のつくるフォルムの境界は、憎みながらも認めあう世界。それが掬っては貼り遺したい希望の灯なのだろう。




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松本みさこさんのWEBサイトです。


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