噂話
最近になって思い出した学生時代のやり取り。その頃は、男女の混じったグループでよく動いていた。
男子たちの会話に、外ですれ違った知らない女の人の、顔や胸が良い感じで気になった、というような話が。
聞いていると…
その気になった人の近くで、気になった内容を口にした様子だったので驚いた。
「その人の近くで『胸が』とか言ったりするの?」というような質問をしたところ、胸など、言わない内容はあるらしいが、近くで言うという話だった。
その人のそばで失礼なことを言ってないなら、そんなものなのだろうと、その会話は終了した。
女子同士だったら…
偶々見かけた気になった人へ視線は向かうのだろう。が、発言は何もしなかったのではないか。いろいろな感覚・感情が抜け落ちた私の周囲なので、周囲の人たちも反応が鈍かっただけかもしれないが。
気になった人が、視界から消えた後。
「さっき、〇〇にいた人が…」と誰かが言い出す。
それから「いつ?」「どこに?」「私も見た」「えー。見なかった。早く言ってよ」という展開が定番だったと思う。
そんな頃から30年近く経った。
自分の身で、気になった人の側を体験することになるとは、思ってもいなかった。
一年くらい前から、何だかいろいろと見慣れない聞き慣れない現象が、身の回りで起きる。戸惑うことが増えた。
私は人の視線をそもそも好まない。見られたくない。
なので、意図的に変身した訳ではない。
昔から、美容にもおしゃれにも興味ない。
長く続けているホットヨーグルトは、副次的にダイエットにもなったと思うが、病気で処方されている薬・老化の影響も大きい。
体力のない私の老化はかなり早い。そのうえ、処方薬もそれを加速する方向だと思う。なので、ほぼ勝手な変化。髪型もこだわりないので、美容師さんが気が向いた形になっている。
ヘンな人としては、「他人のことなんて、誰もそんなに気にして見てないから大丈夫」という言葉を信じて生きてきたのだが…
誰かの視線があるらしい、という前提で動くようになった。
スマホカメラも防犯カメラも溢れている世の中では、それくらいの意識でちょうど良いのかもしれない、とも思うようになった。
初めて「気になった人の側」を体験したのは、一年くらい前。平日の一人休暇していた日。地下鉄に乗っていたときだった。
自分の話題だと思わないまま聞こえていた、スーツ姿の男性2人の会話。
20代なのか30代なのか、私の世代からは判別不能な年下の男性たち。
「お前は、あぁいうのタイプだろ」「お前もだろ」「あぁ好きだよ」
その後…
そんなことがあったことを忘れるより早くから、その日のその後も含めて「好き」という言葉が、時々耳に入るようになった。
「好き」以外では…
外国人が多かった銀座のアートアクアリウムでは「actress」という単語が聞こえた。
最近も、「好き過ぎるだろー」と言っていた男性たちとすれ違った。
昨日は、「年取るとカッコ良くなることもあるのかな」という言葉を、電車内で聞いた。
どの人にしても、私にとっては年齢不詳な年下の男性たち。
最近、気づいたのは…
男性たちが何を話しているのか、私は全く気にしていない中で、「好き」を聞き取れている理由。
私は昔から少し耳が遠いうえに、人のことに無関心。なぜ聞き取れるのか不思議だった。私からの距離も遠くはないが、他の会話は全く聞こえていない。
近い距離で私の話をする男性たち。会話の内容だけではなく、視線が私に向いているからだと、最近になって理解した。目も口も向きは同じ。指向性のある音声は、自然と耳が拾うものだろう。
拾った音声が「キライ」「残念」「キモイ」とかではないらしいので、誰かが良い気分になっての発言なのだろう。良い影響・良い状況だろうと思っている。
私の方は、他人の視線に喜ぶ人ではないので、noteでいただくスキのように、元気になるという話ではない。それでも、noteのスキに少し似ていると思う。
ということで、状況は理解したものの…
男性たちの方に、相手に聞こえているという自覚があるのか、未だによくわからない。むしろ、聞こえてほしいものなのだろうか。
無関心な私は、噂話をする男性たちを観察することはない。
私が向ける周囲への関心は、セキュリティ的に問題ない環境かという程度。
女性たちの会話が聞こえたことはないが…
髪をバッサリ切ってしまった人、カッコ良い方向のファッションを試す人などを、一年くらい前から、時々周囲で見かけるようになった。
昨秋からは、慌てる女性が時々いる。
初めて慌てられる展開になったのは、30代くらいと思う女性が、宅配便を持ってきてくれたときだった。モコモコのユニセックスなルームウェアを着た、ノーメイクの私がドアを開けたところまでは、いつも通りだった。
宅配の人は、「あの! スミマセン!」と慌てた口調で言い出した。
時間を間違えた?荷物に何か?と思いながら、聞き取りにくい口調の話を、集中して聞いていたのだが…
要件は「ハンコ要りません」だけだった。
…意味がわからなかった。反応できず固まった。
が、荷物を受け取るときに、自分が手にハンコを持っていることに気づいた。私がハンコを持っていたからか、と納得した。集中して聞いているうちに、ハンコを持っていることを、すっかり忘れていた。
その日だったか、翌日だったか…
お店のレジに行くと、20代くらいの女性がレジの操作を間違えた。
間違えることはあるだろうが、「間違えました」と言って間違えたレジの人に大きな違和感。間違えたとしても、「少々お待ちください」とか「○○払いの処理中です」とか、定番のセリフがあるように思う。
違和感が二つ重なったことで、女の人は何だか慌てるらしいと理解した。
その後も、時々何かが起きている。
私は、いろいろと欠けたところのあるアラフィフなのだが…
謎でしかない展開に戸惑う。
早々に老化した結果なのだが、退化でもないような…
自分で動かしやすい体に変わったので、健康面は良い状態とは思う。
いつもマイペースでヘンな人は、マイペースにヘンな方向へ進化しているらしい?
そんなヘンな人を、褒める方向に噂する年下の人たちは、どんな風に年を重ねていくのだろう。
…ヘンな人に進化してしまったら、ごめんなさい。
間違えました。どうか好きに幸せに生きてください。
男女ともに年下の人の反応に気づくことが多いせいか、戸惑いつつも、いつも思うのは…
年を取っても楽しさは減らない、というイメージが伝わったならいいな、ということ。
特別にお金をかけて美容を頑張ったりしなくても、服や髪型やコスメが安くても…
自分の体と雰囲気にフィットしていれば、他人目線でも良く見える。自分の好みに合っているなら、自分も心地良く過ごせる。
心地良いと書いておきながら、私自身は、苦手な人の視線に慣れるものではないのだが…
それでも、ネガティブではない年の取り方・将来もあると、少しでも感じてもらえるなら、見て参考にしてください。
と、視線が苦手でも、少し頑張って思ったりもする。
見出し画像はそんな話と関係なく、久しぶりに行った「いつもの空の狭い場所」。