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大倉集古館の春+フランク・ロイド・ライト展

数日前に平日の一人休暇を取っていた。少し前から決めていた行き先は、パナソニック汐留美術館「フランク・ロイド・ライト  - 世界を結ぶ建築」展。
直前の友人たちとのやり取りで、大倉集古館も近いことを知った。「大倉集古館の春 - 新春を寿ぎ、春を待つ」展を見た。

十月桜

大倉集古館そばの江戸見坂公園で、春を感じられた。
広い公園ではないのだが、高低差のある心地良い空間だった。

十月桜ジュウガツザクラらしき桜が咲いていた。樹名板はなかったが、桜色。調べもせずに春の気分で「桜が咲いてます」と友人たちに写真を送り、「早いね」という返信を見て、「大丈夫か? 桜なのか?」と思った。

毎年のやり取りのような気がする。過去には、桜梅サクラバイだったことやら、桃だったことやら… 桜ではないことの方が多かったような…

帰宅後に調べると、秋と春、もしくは、秋から春にかけて咲く桜らしかった。桜で大丈夫だったらしい。昨秋、DIC川村記念美術館の庭園でも咲いているのを見た。

白梅も咲いていた
河津桜の赤い蕾がたくさんだった
よく見ると、いくつか咲き始めていた

曇天で暗かったうえ、メンタルの下がりがちな寒さ。かなりのんびりな出発だった。が、公園では日が差して明るかった。土地勘のない場所だったがホッとした。春色の花や蕾も見られ、少し気分が上がった。

大倉集古館は何だか不思議な建物。好きに設計された感じは楽しかった。大きい展示物を大きい空間で見られた。館内は写真不可なので写真はない。

一双の大きな「扇面流図屏風」は、扇面の柄もおしゃれだったが、屏風の左隻させきは中骨の色もカラフルだった。朱・茶・黒と5本くらいずつ並んでいたり、黄・橙・緑・朱・黒・朱と数本ずつ並んでいたり。

2階に上がると大きな「夜桜」。たくさんの篝火に浮かび上がる、くっきりと華やかな桜。葉もたくさん描かれていたので、ソメイヨシノとは違う品種なのだろう。山の中で、夜のお花見を楽しんでいるようだった。上部に描かれた山の稜線には、大きな月がかかっていた。

小さな展示物も。香席で床の間に飾られるという「四季風景図棚」。その棚自体は小さくない。香道の道具置場なのだろうか。
棚の下部は何かを置くらしき空間。上部に四季の風景が描かれた、小さくした襖のような扉があった。中に組香を入れておくらしい。

そばに「御家流十組香三十種」という展示もあった。お香を入れるのだろう惣包そうづつみには、桜の花びらが浮かぶ「桜川」が描かれていたり、「梅に桜」「三日月に桜」というのも。組香くみこうというのは、香りを組み合わせることで、ストーリーを楽しむらしい。

地下にあるミュージアムショップで、桜茶と「木菟みみずく図」のポストカードを買った。塩漬けの桜が湯呑の中で開く、祇園辻利の桜茶。昨日、家族といただいた。パッケージの開き方も美しかった。ポストカードも飾った。

大倉集古館の後に再び通った江戸見坂公園の十月桜
少し大きく写してみた十月桜

汐留美術館でも、大倉喜八郎という名前を見かけた。二代目の帝国ホテルの展示エリア。美術品だけではなく、アートを大切にする方向に、たくさんのお金を使ってきたのだろう。

フランク・ロイド・ライトは、仕事の初期から日本の影響を受けていたようだった。パースなど、図面兼プレゼン書類らしき彩色された資料は、とてもバランス良く落ち着いて感じるアート作品になっていた。

こちらも途中のフォトスポット以外は写真不可で、写真はない。が、いろいろなものが、しっくりくる良いバランスに感じられた。

日本からの影響としては、浮世絵、地震への対処などから作品に影響が出て、変化していっている様子が展示されていた。環境人間学部教授の講演会にも行ってみたかった。

大きな会場ではないのだが、過去の展示の様子から比べると、「詰め込んだ」と言ってもいいくらいに、写真・図面・家具・建具・動画・模型・建材が展示されていた。

フランク・ロイド・ライトに学んだ、アントニン・レーモンドの「夏の家」には、かなり昔、行ったことがある。軽井沢タリアセンのペイネ美術館の建物。建築は面白い、という感覚を私が持ち始めたのが、このときではないか。

フランク・ロイド・ライトの建築では、池袋にある「明日館」に行ったことがある。建築ツアーではなかったのだが、複数の部屋が展覧会場になっていたので、中をウロウロ歩くことができた。また行ってみたくなった。

帝国ホテル二代目デザインのA4・A5クリアホルダー
明日館デザインのマステ

ショップにあれば買いたいと思っていたのは、プレゼン用図面デザインのグッズだった。が、なかった。他のお気に入りを見つけ、購入して帰ることにした。

オークラ近辺の坂道の影響か、体力が落ちて姿勢が悪くなっているせいか、何だか腰痛気味だった。汐留美術館の前にカフェで、お芋とりんごのムースケーキと一緒に、幸せに一休みしたりもした。リンゴに幸せを感じる寒さらしい。さつま芋も好き。

汐留美術館のフロアからは、隣接する旧新橋停車場ホームの屋根構造に、白いペンキ塗りしているところも少し眺めた。

朝はかなり出遅れたが、マイペースにのんびりと一人休みを楽しんだ日。


大倉集古館は、無類の妖怪好きな建築家の作品とのこと。中国由来をはっきりと感じる、空想の動物があちこちに配されていた。

どこかユーモラスなかわいさが来館者を和ませている、というような言葉を、地下の展示だったか、どこかで見かけた。近くで見られた、階段の手すりの狛犬のような装飾は、かわいらしさを感じるデザインだった。

この日は…
一人でいた男性の中に、歩いている私を見て、何だかニコニコしている人がいることに気づいた日。2度、気づいた。
偶々目が合っただけだが、慌てている女性も一人いた。私もその女性も、何もしていない。電車内で近くに座っていただけの、お互いに知らない人。

私も妖怪になろうかなと思った。そもそもヘンな人の私には、妖怪でも大差ない。
この世のものではありません、という態度は、恐怖感を与えるイタズラものでオススメされないだろうが、ニコニコしてもらえる仕掛けなら良いだろう。

「そのものに いきあえば かならずや はっぴーな きもちになる」
…漢字の方が良いのか?
「其のものに往き遇へば必ずやHAPPYな心持ちになるとぞ聞こえし」

…文章はいろいろと間違っているような気もする。が、妖怪なら、私の大切な冷たい友だちの、おばけちゃんとも近いような…
やっぱり似た者同士だったのか、と私もニコニコしてしまった。

飾った木菟みみずくも、春だけではなく、私とおばけちゃんを寿いでいるだろうか。大倉集古館で展示されていた。他の場所でも見た絵のようにも思う。

どこから見ても目が合うミミズク。春の宵の景色。
まだ紅梅をリアルには見ていないが、寒くても春らしい。


※「建築」note公式記事まとめに、追加いただいたようです。楽しんでいただけましたら幸いです。