私に似合う服⑩
「ダサい服着んといてほしい」
ああ、次はダサい服を着ても怒られるようになってしまったと、悲しくなった。愛せたと思ったのにな。愛されたと思ったのにな。
ザクッと裁ちばさみで心が切り裂かれた。
彼は一体どんな顔をしているのだろうか。
あの時のいじめっ子と同じ目をしていたらどうしよう。
いじめっ子と同じ目で私を睨んでいたら、私に冷たい視線を送っていたら、私を嘲笑っていたら、馬鹿にしていたら、どうしよう。
恐る恐る彼の顔を見た。
彼の視線と私の視線がぶつかる。
私の視線のその先で、彼の目は潤んでいた。泣きたいのはこっちだと思ったけれど、彼は私よりも泣きそうな顔をしている。
なんとかギリギリで耐えている涙のその奥の眼差しは、温かかった。彼の胸の中で、彼の腕に包み込まれている時と同じ温度をしていた。
言葉の鋭さと、眼差しのまるさのギャップに脳がくらっとした。私にはよくわからなかった。
沈黙を破ったのは、またしても彼だった。
「せっかく可愛いのに、可愛い服着ないのもったいない。自分では可愛いと思えへんかもしれんけど、僕にとっては可愛いから、わざとにダサい服着んといてほしいねん。」
私の好きな人はちょっと変わっている。
私を可愛いなんて言うし、可愛いからダサい服を着るなと泣く。
ちょっと変わっていると思う。
彼の目の淵で涙が震えている。人の嘘にすっかり敏感になってしまった私だったが、そこに嘘はないように見えた。
彼の目の淵で揺れる涙のように、私の心もまた揺れていた。
(つづく)
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