私に似合う服①

2年間のいじめに耐えて、私の心はボロボロになっていた。
とにかく耐えるのに必死で、とにかく心が潰れてしまわないようにするのに必死で、自分の心を大切にする余裕なんてこれっぽっちもなかった。
いじめから解放された今も、自分の心を大切にする方法がわからない。


何からいじめが始まったかは覚えていない。
もう思い出したくもない。


ただ私はおしゃれが嫌いになった。

お母さんに可愛い服を買ってもらっても悪口を言われるから、お兄ちゃんのお下がりしか着なかった。本当はジーパンを履きたかったけれど、お兄ちゃんのジャージを履いた。本当は可愛いセーターを着たかったけれど、スポーツブランドのフリースを着た。

本当は白い服を着たかったけれど、私は毎日真っ黒だった。

本当は可愛い服を着たかったけれど、興味のないふりをした。
「お兄ちゃんの服を着たい」「女の子の服は着たくない」と言った。

お母さんはもう可愛い服を買ってくれなくなった。

お兄ちゃんに似合うかっこいい服は、どう考えても私には似合っていなかった。だけどそれがいいんだと言い聞かせた。



私に似合うのはいつだって濡れ衣だった。


(つづく)


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