私に似合う服⑥


事件が起きた。

濡れ衣を脱いだ私に、事件が起きた。

ダサいことに安心を覚えていた私に事件が起きた。


ダサいままではいられなくなったのだ。


高校生になって、周りにいる女の子たちが化粧をし始めた。それでも私は別に化粧をするつもりもなかった。おしゃれにもいっそう気を遣い始めたけれど、私はおしゃれをすることもなかった。制服を着ていれば安全だから、制服に守られていた。可愛い服を着るのはやっぱり怖かった。可愛い服を着れば怒られる。それならダサい服を着たかった。

いじめっ子に怒られてから、悪口を言われてから、もうおしゃれはしないんだと決めていた。
ダサい服を着るんだと決めていた。


なのに、それを覆す大事件が起きた。大事件も大事件だった。もう二度とこの人生には訪れないかもしれない、大事件。



彼氏ができた。


別に可愛くなる必要はないのかもしれないけれど、流石にこのダサい服で隣を歩くのは気が引ける。


ダサい服を着られなくなった。


(つづく)

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