食べる#34 飲食店を2年やってみて思うこと
2022年の5月に、安分亭というジビエのお店をオープンさせました。
飲食店経営と言っても、金・土・日のお昼のみ。
他の日はイノシシを捌いてたり、加工・配達していたり、鳥獣被害対策実施隊として出動していたり…(もちろん会社の経理なども)
相変わらず何屋かわからない日々を過ごしています。
それでも、わたしにとって『安分亭』は、この2年間で もはや無くてはならない大切な場所になっています。
その理由は大きく2つ。
1、自分達が捌いた猪肉の出口になる
安分亭では、主に有害鳥獣として捕獲されるイノシシを猪肉にして使っています。
私たちが入る前の猪肉生産組合は、冬場の貴重なタンパク質源、言わば贅沢品である猪肉を、地域の特産品としてふるさと納税やぼたん鍋用のスライス加工して出荷していました。
処理施設ができて15年の間に、急激にイノシシによる農作物被害が叫ばれるようになり、冬場の『狩猟』より、夏場に『有害鳥獣駆除』で捕獲されるイノシシが増えました。
そんな中、私たちは組合に入れてもらい、夏場に捕獲されるイノシシを譲り受けて解体の練習をさせてもらってきました。
「脂がないから価値がない」
と言われる夏場のイノシシですが、捌いて調理し、食べて研究するうち、この赤身には赤身の、脂身には脂身の美味しさがあり、それぞれに合う料理方法があることが分かりました。
このあたりの記事でも
安分亭で猪肉をお客様へ提供することは、そのことを実証することになります。
共感くださる料理人さん達の存在にも助けられながら、時期や部位、スライスの厚さやミンチの大きさなど、自分たちで肉にするところから試すことができるのはとても大きい!
(幼なじみとこんな企画も↓)
まだまだ試行錯誤だし、個体差の大きいジビエなので完成形もありませんが、このプロセスはとても面白いのです。
実際食べていただいたお客様から直接感想を聞けることで励みになるのと同時に、次はこうしてみよう!と次のアイデアも降りてきます。
2周年企画は、まさにそんなアイデア達の実証の場!
もちろん、自分たちは美味しいと自信を持ってお出ししますので、ぜひぜひ食べにいらしてください。
2、いろんな人と繋がる入口になる
物理的に捌いた猪肉の出口になる、ということだけでなく、
いろんな人と出逢いの入口になっているのが安分亭。
お米や野菜を納入くださる生産者の皆さん。
猪肉組合の組合員さんや、イノシシを捕獲される猟師さんたち。
まず、この方々がいなければ成り立ちません。
そして、オープンからこれまで、ずっと支えてくれているスタッフの存在。
「もっとこうしてみよう!」
と提案してくれ、時にはわたしの体調を気遣ってくれることも…
本当にありがとう。。支えてもらってます。
お客様との関わりは前述の通りです。
「1頭でも埋めたくない」
という想いは今も変わらず。
「イノシシ大好き!」
「美味しかった!」
そう言っていただけると、山での重労働も、ダニとの闘いも全て報われます。
命を奪うという行為そのものによる胸の痛みは、帳消しになることはありません。
けど、「イノシシ大好き。ありがとう」と言ってくれる顔を勝手に想像して、自分を奮い立たせます。
テレビや記事を見て関心を持って食べに来てくださった方や、
遠方からわざわざ来てくれた古い友人や親戚とも、お店があったから出逢えました。
また、食育ツアー参加のちびっこ、地元の中学生、養護学校の生徒さんから、上は生涯学習の一環で来られた人生の先輩方まで。
いろんな年齢層の方が『学びたい!』と訪れてくださいました。
食べて学び、学んで食べる。
わたしが見たい景色がそこにありました!
なぜイノシシを獲るのか?
なぜイノシシを猪肉にするのか?
よく聞かれる質問も、みんなで食べながら一緒に考えることができます。
このnoteをスタートしてから、もう3年が経ちました。
(更新頻度は少ないけど)
『生きる』『食べる』
当初より、この2つはわたしにとってキーワードであることは間違いないのだけど、その関係性はふんわりしていました。
安分亭の中で見た風景。
─みんなで大慌てでお弁当詰めたこと。
─猟師や農家のおっちゃんからの突然のおすそ分け。
─キラキラした子どもたちの表情。
─お客さんからもらった言葉(良いこともそうでないことも)
─誰かと食べた美味しい記憶。
それら一つ一つを2年間大切に心に綴じてきました。
それをnoteでこうして言語化して記録し、
後でまた読み返して思い出す。
『noteを書く』という行為は、わたしにとってエネルギーの要ることです。
けど、こうして1800字を書きながら、いろんな顔が浮かんできて感謝の気持ちでいっぱいになります。
やっぱり、自分のためにこれを書いているのかもな。
それを思うと、このnoteも私にとって大事な場所。
『食べる』と『生きる』には、わたしの生涯かけて果たしたい使命が隠れてる。
…気がする。笑
3年目の安分亭も、4年目のnoteも。
大切に重ねていきます。