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「この院生はノーベル賞を授かる」とアインシュタインが評した論文(1924年)その10
その9の続きです。今度ので第6章(というか第6節)ですか。「VI. Diffraction by a Screen Edge and the Inertia Principle.」
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今回も1ページ分量です。節タイトルは「スクリーンの端による回折と慣性原理」。
ちゃちゃっとかみ砕いて説明します。以下の画像わかりますね、太陽を背にして影がでています。影の輪郭、なんとなくぼんやりしています。
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アイザック・ニュートン卿いわく「光は粒子である!」 されど粒子ならば、影の端っこがぼんやりする理由を説明できないのです。卿もその点を気にされていたらしくて『光学』という著作のなかでなんかうだうだと理屈こねています。
「光の粒子が何か物体に降り注いで、それの端っこでは、光粒子と光粒子のあいだに何か力が働いて、それで影の輪郭がほわんとするんやないやろか」(意訳)と。
ここでルイ・ド・ブロイくんがさっそうと現れて「それはプラズマ…ではなくて位相波だーっ!」と言い切ってきます。
彼の実際の説明は簡潔にすぎるので私なりに長く説明しなおすと…
「物体に「光の原子」が降り注ぐと、その物体の端っこで『位相波』が回折(前回の解説参照)して、わずかに影の内側に曲がりこみ、それに沿って『光の原子』も影の内側にやや折れ曲がって進むのである、どうだぼくって明晰でしょ」
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むろん現代の目で見ると「いかにもこの時代の機械論やねー」なのですが、方向性は間違っていなかった。現代人の私が読んで感心するのは、この後「フェルマーの原理」と「最小作用の原理」について再び言及していることです。
この二つについては前にじっくり説明したのでここでは説明を省きます、めんどくさいから。フェルマー原理 → 最小作用の原理 の順に発展したことが分かれば今はいいです。
この「最小作用の原理」くんは、力学のエースです。背番号のないエース。これを出発点に置いて力学は体系化されていました。しかしもし、ルイくんの「位相波」理論が正しいとしたら、「最小作用の原理」くんはエースの座から陥落するわけです。
「そのとき力学と光学は本当の融合を果たすことになるやもしれぬとぼくは愚考いたします」("I think that these ideas may be considered as a kind of synthesis of optics and”dynamics.")
原論文のこの節、もう一度見てみましょう。赤で括ったところが、同節の最終段落なのですが…
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「位相波」は、電磁気学のようにベクトルがびっしり面を埋めるみたいな図では図示できないのが弱点やねと述べています。こういうの見たことあるでしょ、電磁気学の図で。ルイくんいろいろ計算してみて、こういう風には「位相波」を図示できないと述べています。
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すると「位相波」はまぼろしなのでしょうか? 「そんなことはない」とは本人の弁。「波の回折と考えれば、こういう縞模様のしましま具合を、シンプルな数式で再現できるのだから、波が光の原子に伴っておるのは否定できまい、ふんふんふーん」
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シンプルな数式? そうです高校物理で習うくらいのレベルです。ということは中学校の数学レベルの数式です。ここでは省きます。興味のある方は高校物理教科書の「波動」の章を見ていけば、こういう図といっしょに素朴な分数アンド √(ルート)の付いた公式が見つかると思います。
以上が第6節の概要です。残るは実質二章(というか二節)駆け抜けていきましょう!
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