なにものにもなれなかった、わたしの願い【お題参加】
もしも叶うなら。その一言を見て、わたしは悩んでしまった。
わたしは今、書くことを仕事にできている。決して儲かっているわけではないけれど、彼と慎ましく、健やかに暮らせる程度には稼ぐ力が付いている。
もしも叶うなら。
文鳥を家族に迎えたいな。ゆくゆくは猫とも暮らしたいな。
ここのおうちで、穏やかに過ごせたら、それでいい。
立派なマンションも、大きな画面のimacも、もうなんだか必要なくなってしまった。
もともと持っているコップが小さいから、きっとゆめやきぼうもすぐにいっぱいになってしまって、満足感もあっという間に得ることができるのだろう。
そんな、ささやかなことじゃなくて。
もしも叶うなら。
…病気が治ったら、どんなだろうか。
痛みがなくなって。だるさやめまいも消えて。
すっきりと朝を迎えることができて、意識もはっきりとしていて。
おひさまの下で、なにも気にすることなく歩くことができる。
誰かに傘が当たらないように気にする必要や、荷物が多くなるストレスからも開放される。
優先席に座って、じっと罪悪感にこらえることもなくなる。
いつ急変するかわからない体調にドキドキすることもなくなる。
自転車に乗れたら、気持ちいいだろうな。
おひさまを浴びながら、お散歩したいな。
ふつうの人みたいに、ふつうに暮らしたいな。
…到底叶わないことだから、なんだか虚しくなってきてしまった。
それよりも、病気だったからこそ、今のわたしがいるんだ。
病気じゃなかったら、公務員を目指していなかったかもしれない。
公務員試験に落ちていなかったら、民間就職しなかったかもしれない。
あの会社に就職していなかったら、ライターの楽しさに気が付かなかったかもしれない。
会社を辞めていなかったら、働きすぎなことに気が付かなかったかもしれない。
あの時生活保護を受けることになっていなかったら、物事の大切さにも気づけなかったかもしれない。
精神的に限界が来ていなかったら、家族の優しさに触れることがなかったかもしれない。
そして、彼に出会うことも、ライターを目指すこともなかったかもしれない。
少なくとも、過去のわたしがなければ、今のわたしでは到底なかった。
病気でも、いいんだ。
病気だから、いろんなことに気づくことができた。
病気だったから、いろんなことを学ぶことができた。
じゃあ、何を願おうか。
もしも、叶うなら。
いつか、書籍を出版したい。
家族みんなを、びっくりさせたい。
お世話になったあの人やあの子たちにも、恩返しをしたい。
なにものにもなれなかったわたしが、唯一持っていたこの能力で。
みんながスキだと言ってくれる、この言葉で。
いつか、本を出版したい。
きっと、わたしが本を出版できる時。
その時は、本当の意味で親孝行ができると思うし、わたしを見守り、助けてくれたすべての周りのひとに恩返しができる時だと思う。
いつか、叶いますように。
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今回は、こちらの企画に参加させていただきました。