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川魚は、みな揃つて小指ほどの大きさで可愛ゆかつた。とつぷりと背から腹へ塗られた紺のぼか…
かろきねたみ 三度ほど酒をふくみてあたゝかくほどよくうるむさかづきの肌 袷の襟…
夫人は茶テーブルの上の金縁の紅茶茶碗へ紅茶を注ぐと軽く会釈して夫の側へ腰を下ろした。 …
誰が先にその求人の事務所に乗りつけるか、まるで自転車競です。そして一々すげなく断られて帰…
わたくしがかの女に何か御馳走の望みはないかと訊くと、 「では、あの、ざくざくと掻いた氷水…
食味なども、下町式の粋を好むと同時に、また無茶な悪食、間食家でもありました。 『岡本一…
「わたしもそうよ。正月早々からあんたをこんなことに引張り出すなんか、いけないと思ってたの。でもね、正月だし、たまにはそんな気持ちばかりでなく銀座を散歩したいと思って、それで裾模様で来たわけさ。今日はゆったりした気持ちで歩いて、スエヒロかオリンピックで厚いビフテキでも食べない」 『年越』岡本かの子 出典 えあ草子・青空図書館 青空文庫
彼等の晩餐の献立。パン、チーズ、チョコレート。 『英国メーデーの記』岡本かの子 出典 …
私達は、新酒を汲み別ける興味をもって、駅場々々に籠を抱えて居る女達から蜜柑を買って喰べ…
茶瓶に湯が注がれて、名茶『一の森』の上臈の媚びのやうな淡いいろ気のある香気が立ちのぼつ…
蛙料理は上等のバタでフライにしてトマトケチャップをかけて食べる。上等のバタを使うので、出…
老僧 ——ほい、思い出した。あんた大根の葉がえらい好きなそうやな。 蓮月 ——ほほほほ。…
食物の残りを入れた壺をひとつだけ、内庭の中央に残し置く。しばらくは静けさの中に黎明が育ま…
松崎は小早く川から上がつて縁側で道具の仕末をしてゐた。釣つて来た若鮎の噎るやうな匂ひが夕闇に沁みてゐた。そこへ浦子が、 ——お金が汗をかいたわ。」 といつて帰つて来た。 ——松崎さん。こんなお金でおしほせん買へて?」 『汗』岡本かの子 出典 えあ草子・青空図書館 青空文庫