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錫森栞
2021年8月31日 23:28
辺り一面は暗い樹木に囲われた。時々廃車が見えるばかり、獣道はどこを走っても同じ景色が続いていた。「どうして僕は」ここに来たのだろうか。壊れた山中の公衆電話の受話器を取ってみる。ひんやりとしたアスファルトは心地がよかった。「もしもし。」自嘲の笑みを浮かべて。カビの匂い、いつかのアパートを思い出した。横には放置された自転車に洒落たサンダルの片
2021年8月14日 21:29
彩られた珊瑚礁みたく読書灯の眩い部屋の中で自分の手の輪郭を透かしている。真っ黒なカーテンが深海みたいだ。此処は誰も来ない。僕の場所。外には大きな邸園があるけれど、大人達みたいに御茶を不味くするような話はしないで、僕は此処で天井の魚に笑いかける。大きな天幕に覆われた僕の地球に、大きな鋏の絵画が一つ。机にも僕の描いた鋏が一つ。此処は終わらない夜更けの世界だ。鋏は必要がないからこの絵は後で燃