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片想いは破滅への道。

突然の告白で申し訳ないのですが、私は片想いが絶望的にへたくそである。どのくらいへたくそかと言うと、22年間私は片想いを実らせたことがない。

とりわけへたくそなのが、「タイミング」と「駆け引き」だ。

無論、幼い頃に少女漫画という名の教科書を用いて、数々のカップルの始まりを見届け、彼らの一途な恋愛劇にものすごく憧憬の念を抱いたし、制服を着たら恋心が付録でついてくるもんだと思っていた。

現実は違った。

私の片想いがスタートを切ったら、ゴールテープを切る頃には、恋愛漫画の二番手当て馬キャラとなって走り去る。
読者投票では主人公より上回る支持率を時々いただくけれど、わたしが生きる世界に読者はいないのです。

中学生の頃、私が好きになった人には恋人がいて、彼女は溌剌としていて美しくて、漫画のヒロインが現実生きちゃったみたいな子だった。
当時の私は、彼女という存在は有象無象に等しくて(大変失礼ながら)、好きという感情だけを信じてめちゃくちゃ悪足掻きをした。
けど無理だった。
結局、都合のいい恋愛コンサルタントを全うした。
当て馬はヒロインに勝てなかった。

高校生の頃、もっと面白い事件があった。
私が好きになった人はサッカー部の先輩だった。
文化祭で見かけて一目惚れして、放課後近所を散歩する権利を半ば強引に勝ち取った。
でもわたしが駄目だった。
わたしは片想いの相手と「女の子」として一言も話せないことを忘れていた。
極度の緊張状態になるとわたしの中の「女の子」は完全にスリープモードに入り、代わりに「親父」が覚醒してしまう。
つまらないギャグをひたすらに製造し続けて、手を叩いて笑い、別に君のこと意識してないよ私。という偽りだらけの親父キャラを装い、自ら墓穴を順調に掘り進めてしまうのだ。思い出すだけでいたたまれない。奢ってもらったホットココアを両手で寒そうにギュッと包む、この行動だけが唯一「女の子」だった。
彼には告白をした。
こんないたたまれない状況だったけれど、とりあえず想いだけ伝えたくてLINEで「好きです」と送った。

ここで事件は起こった。

私が告白をした日、彼はちょうど別の女の子に告白をしたところだったらしく、彼の頭はカオスを極めてしまい、返ってきたLINEは「え、ちょっと待って!」だった。
もう一度言う。

「え、ちょっと待って!」

だった。

彼が告白した女の子はわたしの友達だった。
彼女は昔から優しくて可愛かった。ものすごいモテた。やっぱりヒロインだった。
私はそんな麗しき彼女に、
何故か謝罪されるという大惨事になった。
今度はわたしが「え、ちょっと待って!」と言わざるをえない状況になって、
わたしの方こそごめんね。と言った。

こんなこと一生言う機会ないだろうなぁと思いながら、一語一句噛み締めて。

告白してごめんね。

言い訳に聞こえるかもしれないが、わたしは恋多き乙女では決してない。
好きだ。と自覚するまでが非常に長く、例えて言うならば、石橋を叩きすぎて割ってしまうタイプだと自覚している。
恋愛が必修科目として取り入れられている世界ならば、わたしは永遠に出席率でしか得点を稼げない。
そんな私の、数少ない片想いがこれだ。

少女漫画のヒロイン達は素晴らしい。私は彼女達をものすごく尊敬する。些細なきっかけで人を好きになる。嫌いな人間のことをいつの間にか気にかけちゃう。わたしだったら絶対ずっと嫌いだ。

彼女たちは沢山の障害物を、時には三角関係を軽やかに乗り越えていく。どんなに優しい美男子、たとえ花沢類に告白されたとしても、彼女達は一貫して「嫌いだった男」に恋をし続けるのだ。
意味がわからない、やっぱりわたしは嫌いな人はずっと嫌いだ。
それでも少女漫画のヒロインに憧れてしまうのは、そんなヒロインに私もなりたかった、という気持ちが奥にあるわけで。

彼女達とわたしの片想いの何が違うのだろうと考えた時、やっぱり真っ先に出てくるのは自信の有無だと思う。
程よく自立をしていて、やっぱり自信がある。
時々、稀に、教室の隅でひとり静かに過ごしているヒロインがいるけれど、彼女達の場合は片想いを「される」側を徹底的に死守していて、する側のイメージはあまりない。
むしろあったら教えてくださいわたしに。

ここまでつらつらと書いてみて、つまり何が言いたいかというと、わたしは少女漫画のヒロインに激しく嫉妬をしている。ただそれだけに1800字分の労力を使っている。
それでも、わたしは今、1800字打つことを惜しまないくらい、恋をしている人間すべてが羨ましいのだ。
もし、あの時、自分の気持ちに嘘ついて、諦めるという選択肢を取らなかったならば、彼らは振り向いてくれたのだろうか。
分からない。分からないけど、今よりもっと片想いに自信が持てた気もする。



人生、一度くらいヒロインになれたら。

わたしにとって片想いは、今でもずっと破滅への道。

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