僕はあの日、先輩と電車で飲んだあのビールの味を決して忘れない
「電車の中でビール飲んじゃダメだよね」
いま思えば、その通りだと思います。
コロナだしマナー違反かもしれない。
それでも、あの時に先輩と電車の中で飲んだビールの味は格別だった。
火照った体、疲れた脳みそ、疲弊した日々。
まるで地下労働施設で1ヶ月ぶりのビールを頂くカイジのように歓喜したんですよね。
漫画「カイジ」より引用
「ビールを飲んで涙が出る」そんなの漫画だけの話かと思いました。
なんであんなに美味しかったのだろうか。
あなたはビール好きですか?
ちょっと私の思い出のビールの話に付き合って頂けませんか?
もしよければ、一緒に振り返ってください。
先輩に教わった大切な「仕事をつまらなくしない方法」
これは前職で働いていた頃の2年前の話。
私は化粧品会社の工場にて、技術開発や生産トラブルの対応などを担うエンジニアでした。
もう少し噛み砕くと、マツモトキヨシに並んでるような化粧品を、いかに工場で大量かつ効率的にコストを下げて作るかを考える仕事でした。
発売スケジュールに基づき、研究者が開発した商品を納期までに工場生産できるように品質やコストを天秤にかけながら開発していくというわけです。
当時、私の先輩に超優秀な先輩がいました。
年齢は40代前半の大先輩でした。
管理職で直属の上司ではなかったのですが、懇意にさせて頂いた大切な人。
頭もキレていて、東大卒。
私は県内の工業高校卒なので、基礎学力は月とスッポンでしたね。
そんな知識レベルがかけ離れた先輩は私に優しく「なぜそう思う?根拠は?他の反証例は?」と日々、学力がない私に考える力をつけてくれました。
先輩の印象的な言葉がある。
「やらないとできないは別の話。やらない理由とできない理由を一緒にするな。仮にできない理由があったとしても、どうやったらできるか考えないと、仕事はどんどんつまらなくなる」
「やらない理由≠できない理由」
ストイックに聞こえるけど、自分に厳しい先輩だからこその言葉なんだと思う。
今でもこれは胸に刻んでいる。
「仕事が辛かったり、つまらなく感じているのは、やらない理由を口実に逃げているから。できない理由に向き合い、できる方法を考えていないからなんだ」と。
先輩に大切なことを教わった。
あくまで一つの考え方。絶対に正しいとは思ってない。
ただ、自分は先輩を尊敬していて、そうなりたいと思ったから信じた。
トラブルを先輩と乗り越えた先にあるモノ
工場で働いていると生産トラブルはつきもの。
あの日もトラブルが起きました。
全部、私の責任でした。
私が担当した商品の生産工程によって、品質に異常をきたして生産が止まってしまいました。
トラブル発覚が午後17時。
原因を探るため、現場に出向いて現状を把握する。
遅くとも納期があるから今日中に原因を究明して解決策を投じないといけない状態だと知る。
何が原因かはわからない。
原因が分からない以上は同じ現象を再現できるか実験室に戻り実験を繰り返す。
午後20時。20回実験しても現象を再現できない。原因不明で泣きそうになる。
午後21時。先輩が登場。
「手伝おうか?」と優しく実験を手伝ってくれる。そこからさらに実験を重ねる。
午後22時。50回くらい実験を繰り返し、ようやく原因が究明。
午後23時。解決策を決め現場に指示を出し、無事にトラブルを解決の見込み。
上司からは明日の朝一番でトラブルの是正報告をしてくれと言われ、資料を明日の朝までに準備しなければならない。
もし解決策が間違っていたら最初から実験をやり直さなければならない。
憂鬱になりながら、今日という日においては一件落着して少し安堵した。
当然ながら、先輩がいなければ解決などしなかった。お礼をしなきゃ。
「先輩ありがとうございます。。」とお礼を伝える。
「気にするな。終電なくなるから一緒に急いで帰るぞ!」と会社を急いで先輩についていく私。
先輩とダッシュで電車に乗り込む
会社を出たのち、先輩が「ちょっとコンビニで買うものあるから」と言われ待つ。
23時半。
「よしっ、あと3分で終電だから走るぞ!」
終電を逃してはならない。
なおさら、先輩は。
先輩はシングルファーザーで片道2時間かけて通勤していた。家には息子が待っている。
家事と育児と仕事。
当時の自分には到底理解できないハードワーク。
そんな先輩が辛いとか大変とか、弱音をいっさい聞いたことがない。
朝は4時起きで子供の朝ごはんを作り、洗濯と掃除をして、6時には家を出て片手には子供を抱え、片手にはゴミ袋を抱え、おっきな鞄を背負って毎日出勤していたそうだ。
そんな先輩はスポーツ万能で東大時代はラグビーをやっていた。
足が速く、終電には余裕でゴール。トライ成功だ。
私はついていくのが精一杯で、電車に駆け込んだ際には心臓がバクバク、息がハァハァとなっていた。
JR宇都宮線の大宮行。15両編成の1号車。
車両には私たちと車両内の反対の端っこでサラリーマンが音楽を聴いて寝ている。
私「どうにか間に合いましたね(ハァハァ)」
先輩「だろ。人生さ、どうにかなるんだよ(ハァハァ)」
多忙を極める先輩が言うからこそ、説得力があった。
そんな言葉を語る先輩を心の底からカッコいいと思った。
そっと渡してくれたキンキンに冷えたビール
席に座って宇都宮線の最終列車が出発した。
先輩が何も言わず無言でビールを差し出してきた。
キンキンに冷えたアサヒスーパードライ500ml。
先輩が重い口を開くように語った。
「毎日、思い通りの仕事ができなくて、現実にあらがうように働いて、何もかも嫌になったり、疲れ切った時に飲むビールはいつだって美味しいんだ」
「空腹」に勝る調味料はないと誰かがいった。
同じように、「疲労感」に勝るビールに合うおつまみはないかもしれない。
新橋のサラリーマンが最近はテレビで見なくなったけど、昔こんなことをテレビ中継で語っていた。
「いい仕事をした後のビールは美味いんですよ。ビールが美味く感じるかどうかが私の仕事のバロメーターですね。ビールが不味く感じるならね、それはまだ頑張りが足りてないから反省してますね」
自分の仕事と密接な関わりがあるビールの美味さ。
地下労働施設のカイジが飲んだビール。
彼はきっといい仕事をしたに違いない。
もちろん、私がこの後に先輩と静かに乾杯して飲んだアサヒスーパードライの味は格別だった。美味かった。
走って疲れてる身体、遅くまで残業で疲れた脳みそ、明日の資料だってこれから作らないといけない。 もし解決策が間違っていたら最悪の事態になるかもしれないし不安だ。
そんな状態の自分にそっと差し出されたアサヒスーパードライ。
思い出すだけでプルトップをプシュとあける音がする。
缶を傾けて飲んだ瞬間に喉に染みる。
胃に入ると五臓六腑どころか脳天を突き抜けるほどに美味い。涙が出る。
大袈裟に聞こえるかもしれないけど、この先の人生において、あの味を忘れることはないと思う。
先輩、本当にご馳走様でした。
次は私にアサヒスーパードライを奢らせてください。
キャリアコンサルタント はるき。
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