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世界的優良企業の実例に学ぶ 「あなたの知らない」マーケティング大原則(読書メモ)

“マーケティングのイロハが理解できます“

本書は、マーケターとして数々の企業で活躍してきた足立光氏と土合朋宏氏が、マーケティング実務者のための戦略指南書として、実践経験に基づく「原則」を解説した1冊となっています。P&G、コカ・コーラ、マクドナルド、ツイッター、スマートニュースなどの最新事例や、業界のキーパーソン達との対談も収録されており、読み応えも十分です。

読み終えた感想としては、マーケティングに定義される内容が幅広くカバーされているため、初心者の学び始めや実務者の復習として読むには良さそうです。

また、古典的なマーケ本とは違い、理論だけでなく実例も交えて解説してるため、活用場面のイメージが掴みやすかったです。

そして、要素によっては著者が「やるべきではない」とハッキリ主張していることも好感が持てました。自分含めた知見が浅い人には、こういう情報はかなり助かります。

では、今回も印象に残った内容をピックアップします。

「ゲームチェンジ」でマーケットリーダーを切り崩す

事業を通じて、この「新たな便益を作る」ことが本当に難しいと感じています。消費者行動の理解からやり直してみます。

自社の製品・サービスがその業界の 2位、 3位という場合には、「新たな便益を作る」ことが大事になってきます。マーケットリーダーと同じ土俵(便益)で戦っていては、いつまでたっても勝つことはできません。
たとえば、洗浄力の強さを便益にしているマーケットリーダーの洗剤に対して、 2番手の洗剤が「洗浄力 10%アップ」という便益を訴求しても、大きな影響は期待できません。そういう場合は、「洗浄力じゃないもののほうが大切だ」というように、業界での重要とされる便益を変えてしまうことで、マーケットリーダーを切り崩すことができます。
自分がナンバーワンになれそう、かつ消費者が重要と考える便益を見つけて、それを訴求することが必要なのです。

競合のキャンペーンは見ない

たしかに競合施策を追随して目立った成果に繋がらないケースは多いです。他の業界からの転用は納得。

競合のキャンペーンと自社のキャンペーンを比較すべきでしょうか。答えは「ノー」です。競合のキャンペーンは、見ないほうがいい分野です。
成功している競合のキャンペーンをこと細かく分析してしまうと、つい、それをまねしたくなるものです。当たり前ですが、まねしたら差別化になりません。だから見ないほうがいいのです。
ただ、過去に自社や競合が失敗したキャンペーンで、「時代が変わった今なら、これをやったら成功するかも」というのは、やってみる価値があるかもしれません。また、他の業界の成功しているキャンペーンを、自分の業界に当てはめたらどうなるんだろう、と考えるのはとても有効です。

価格で勝負しない

価格決定前のリサーチ不足は結構ありそう。自ら価値を低く見積もることだけは無いよう注意したいですね。

マーケティング担当者は、基本的に価格で勝負してはいけません。同じ物をいかに高く売るか、それを考えるのがマーケティングなのです。 
価格設定の正しいやり方は、その物やサービスが「いくらで売りたい」「いくらなら売れる」ということを先に決めて、その価格で売れるような原価になるように物やサービスを設計する、という順番です。
価格設定の目的は単に価格を決めることではなくて、「お得感を出すこと」とも言えるでしょう。

小さな「引き」の強いブランドつくる

こうしたニッチ戦略は生き残る上で益々加速しそうですが、マーケティングノウハウの差が結果に大きく影響を与えそうです。中小企業のマーケティング理解は急務ですね。

現代では、ひとつの製品やブランドで莫大な売り上げを上げるというのは非常に難しくなったと思います。これだけメディアが細分化してしまい、消費者それぞれが違う価値観を持つようになると、昔のような全員が知っている・使っている大ヒットというものは、生まれにくい土壌ができてしまっていると考えたほうがよいでしょう。
今は「小さいターゲットに刺さる、小さいブランドの集合体」という会社のほうが間違いなく強いと思います。そうであれば、大きな売り上げが必要ないので大手 ECサイトや全国的な流通で販売する必要もありません。
小さくても「引き」の強いブランドをたくさん作って、さまざまなメディアを駆使してコミュニケーションすれば、消費者はそのブランドをネットなどで指名買いしにきてくれます。そんなブランドをいくつも育てて自社サイトで販売するのが、ブランディングも価格もコントロールでき、売り上げにもなり、収益も上がる方法です。

流通販促費は効果的

どうしても目先の数字確保に向けて安易な値引きに走りがちなので、これからは流通販促費の投下も選択肢に加えていきたいです。

流通販促費を払いさえすれば、まったく売れないものでもない限り、店頭や ECサイトのいい場所にたくさんの自社製品を並べることができる、ということです。あまりにも当たり前の商慣行として行われているので、その「投資対効果」をあまり考えたことがないかもしれませんが、多くの場合、かなり効果的です。
マーケティング担当者はすべての施策の効果を俯瞰的に見た上で、場合によっては自分の担当するマーケティング費用を削ってでも、(もしかして他部署が管轄しているかもしれない)流通販促費を増やしたほうが、売り上げ増に効果的かもしれません。

値引きは麻薬

完全に当社は中毒患者です・・・。「なくなる利益に比べて消費者に対するインパクトが圧倒的に小さい」は本当にその通りだと感じます。

値引きは、たしかに効果的な販売促進です。価格を下げるだけで、製品・サービスの売れ行きが目に見えてよくなることも多くあります。ただそれは、あくまでも短期的にしか効かない、繰り返すほど効果が弱くなっていく、長期的には自社の製品やサービスのブランドや収益性を下げていく、「麻薬」です。
企業側にとって「 10円分利益が減る」というのは、決して小さくない「犠牲」ですが、消費者にはそこまで理解されません。つまり値引きは、なくなる利益に比べて消費者に対するインパクトが圧倒的に小さい、と考えたほうがいいと思います。
マーケティング担当者は、いかに値引きをせずに継続的に売れる仕組みを作るかということに、頭を使うべきでしょう。「値引きをしないのが美学」と考えたほうがいいと思います。

きちんと効果を測定して、繰り返し伝える

マーケティングに限らず、定着させるには地道な行動の繰り返しですね。近道なし!

消費者コミュニケーションの基本は「繰り返し伝える」ことです。広告に限った話ではありませんが、情報の受け手は送り手ほど真剣に見たり聞いたりしていないので、一回見ただけで何かを覚えてくれる、ということはあり得ないのです。
マーケティング担当者が「これ、しつこいんじゃないか」と思うくらい繰り返さないと、消費者の頭の中には何も残らないと考えたほうがいいでしょう。広告の効果を上げるためには、大切なことほど、繰り返し伝える必要があります。

戦略的PRで話題化する

広告とPRの違いすら曖昧だったので、この解釈を聞いてすっきりしました。メディアもどれが良いではなく、どう融合させるか、という視点は新たな学びでした。

広告で「自分で言う」のではなく、PRで「人に言ってもらう」ほうが圧倒的に効果があるというのがわかってきたわけです。
エコシステムじゃないですが、マスとソーシャルの間をグルグル回っている感じなんですね。なので、最初はツイッターで火種を作った、それをニュースメディアで記事にしてもらって、そのニュースをソーシャルメディアで広くシェアしてもらって、それを見たテレビが取り上げるといった流れを作ることが、話題化のために必要な仕掛けだと思います。

やみくもにビッグデータ集めに投資すべきではない

これは意外でした。とはいえ、個人的にデータ蓄積・分析の必要性は感じてるので、「過度な期待を持つなと」いうメッセージとして受け止めてます。

ビッグデータを分析するとより効果・効率の高いマーケティングができるというのですが、「こんなビッグデータをもとに、こんな施策を行ったら、消費者がこんなふうに動いた」という成功事例を、単発ではなく継続的に出し続けている会社は、残念ながら、まだ聞いたことがありません。
自社の購買データを蓄積して分析して施策を打つことで差別化できるという発想には、どうしても疑問符がつきます。そもそも自社データだけを集めても、消費者全体の購買行動からすると〇・〇〇何%にしかなりません。
顧客データを分析しても、本当に顧客に効く、差別化になるような新しいアイデアは生まれにくいのが現実です。

まとめ

マーケティングの「原則」を要素ごとに解説してる本書ですが、根本的な考え方ついては、著者が対談した元スマートニュース執行役員の西口一希氏によるメッセージに集約されてる気がしました。

普通の商売人はみんな、どんなサービスを提供したらいいかとか、どの時間帯でやったらいいかとか、お客さんの生の情報を聞きながらやっています。結局、マーケティングってそれだけのことなんです。大企業のマーケターも、駅前の屋台と同じように、シンプルにお客様のことを考え抜いて商売しましょうよ、と言いたいですね。
マーケティング、つまり商売の原点は、どうしたら一人のお客様にファンになってもらえるかを考え抜くこと、それを 5人、 10人とどれだけやり続けていけるのかということ「だけ」だと思います。

すごくシンプルですが本質を突いてると感じました。またこれを読んで、マーケティングについて自分で勝手に難しく解釈していたことに気づけました。

マーケターはもちろんですが、事業戦略に携わる方にはおすすめしたい1冊です。

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