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『生きるチカラ』 書評 運をぐるぐる回す
植島啓司著『生きるチカラ』に関して。この人の本では以前『偶然のチカラ』を読んでおもしろかったんで、こちらもいってみた。ちょっとまだ読書ノートを書く前なんでまとまらないですけど。
読者が、あるいはこの場合俺が問われているのは、通常の考え方やら常識やら固定観念やらである。よほどキビシイ目に遭わないとこういう問いは出てこない。たとえば旅について、「自分にふりかかることのすべてをおもしろがれるかどうかが、旅を楽しめるかどうかの分岐点なのだ」と説く。何者だこの人。言ってることはわかるけども、いや、すべてはおもしろがれねえよ。トラベルの語源がトラブルなのだとは巷間よく言われる話だとしてもだ。でもまあ旅人の極意なんだろうなこれ、すべてをおもしろがること。
また、別の章に山本周五郎の言葉が引かれている。「貧乏と、屈辱と、嘲笑と、そして明日の望みのなくなったときこそ、初めて我々は人生に触れるのだ」。そういってしまう周五郎すらすごいんですけど。このあたり失敗論というのか、著者は『柳橋物語』を紐解きながら「すべての選択には、それ自身、間違いが含まれている」のであって「好ましい選択と誤った選択があるのではない」、そして「どちらが正しいかは死ぬまでわからない」とする。このヘヴィな話の結論には「選択し、躓くところから人生は始まる」とある。選んで失敗してから人生に参加しろと。
そんなタフなことをいう一方、方法論として書かれているのが「運をぐるぐる回す」ということ。ネパールで小銭を物乞いに配っていくことを例に、何かしらの動きをとればそれは運も動くということらしい。このあたり東洋思想の命(めい)にも絡められそうなヒント。運命は命を運ぶものである。では上手な運の回し方は、というとこれは占術や風水やスピリチュアリズムになってくるであろうので、この本には書かれていない。ここではシンプルに、なんかしろ、というだけである。
他、話題はいろいろでした。おもしろかったです。
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