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人は人によって動かされない、人は本人の意思のみで動く

指示待ちが多い理由は社長にあるような気がした

「社員には主体的に考えて動いてほしいと伝えているが、なかなか思うようにならない」。ある年配の社長からそんな声が届いた。仕事を自分ごとと思わず、いわれたことしかやらない「指示待ち社員」が多いのだという。

しかし、聞いているうちに、指示待ちが多い理由は社長にあるような気がした。なぜならば「主体的に考えて動いてほしい」といいながら、無意識のうちに指示を出しているからだ。「自分ならこうする」も醸し出している。

「任せる」といいながら、実際には自分で答えを出してやってしまっているのだ。「実は社員は答えを持っています。その答えを引き出すのが社長の仕事です」と述べたが、どうもピンとこなかったようだった。

ピサで生まれた天文・物理学者「ガリレオ・ガリレイ」

話は変わるが、2007 年1月、イタリア・トスカーナ州のピサを訪れた。フィレンツェからバスに乗り、周囲4km余りが城壁によって囲まれた城塞都市ルッカで一泊、翌日にタクシーで30 分ほど走ってピサに到着した。

ピサで有名なのは「ピサの斜塔」だ。約3.97 度傾いた塔の螺旋状の階段をふうふういいながら上まで登った。この斜塔とともにピサで知られている人物がいる。1546 年にこの地で生まれた「ガリレオ・ガリレイ」だ。

52歳のときに、地球は太陽の周りを回っているという地動説を唱えたことで裁判にかけられ、軟禁生活を強いられた。生活は困窮し、最愛の長女を病で失い、本人も病で失明する。しかし、口述筆記で研究を続けたという。

「自分で考える習慣を身につける」ことを手助けする

「 それでも地球は動いている」・・地動説は真理ではないという宣誓書を書かされた際にガリレオが呟いた言葉だ。他にもこんな言葉も残している。「人にものを教えることはできない。自ら気づく手助けができるだけだ」。

「 自ら気づく手助け」とは何か。自分の頭で考えることから気づきは生まれる。ということは、気づく手助けとは「自分で考える習慣を身につけさせる」ことではないか。具体的には「言葉のキャッチボール」が必要だ。

「 どうしたらいいでしょうか?」というボールが届くと、上司は答えを与えようとするが、「気づく手助け」にはならない。大事なのは「あなたはどうしたいのですか?」という返球だ。これが考える習慣のきっかけとなる。

見えないと始まらない。見ようとしないと始まらない

1642 年、ガリレオは77 歳で息を引き取った。すべての役職を剥奪され、外に出ることを禁じられた監視付きの軟禁生活は死ぬまで続いたのだ。死後も名誉は回復されず、カトリック教徒として葬ることも許されなかった。

1965 年にローマ教皇パウロ6世がガリレオの裁判に言及したのを発端に、裁判の見直しが始まった。1992 年、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世は裁判が誤りだったことを認め、ピサの斜塔の頂上においてガリレオに謝罪した。

実に死去から350 年後のことだった。最後にもう一つガリレオの言葉を紹介する。「見えないと始まらない。見ようとしないと始まらない」・・社長さん、どうか自分だけでなく、社員さんのことをもっとよく見てくださいね。 

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