変化に対するアレルギーの処方箋
無難なやり方に固執しようとする集団意識
経営者ならば必ず経験していると思うが、これまでやったことがないことに取り組もうとすると、周囲からさまざまな声が上がって来る(いや批難や反発の声といったほうが適切だ)。とくに社歴の長い社員の声は大きい。
コンサルティングという仕事柄、こういう場面によく出くわす。「失敗するかも?」「客が減るかも?」「売上が落ちるかも?」「批判されるかも?」・・「かも、かも、かも」で、まさに「かも」の大合唱だ。
次には「そうはいっても、とりあえずは、まあそのうちに」という言葉が出てくる。現状のやり方では見込みがないとわかっていても、慣れ親しんだ無難なやり方に固執しようとする。気の弱い経営者はここで諦めてしまう。
ストラビンスキーの「春の祭典」の初演での大混乱
アレルギーで思い出すのは、ストラビンスキーのバレエ音楽「春の祭典」だ。20世紀の名曲ベスト30にも選ばれた楽曲だが、1913年にパリで初演されたときは大変だったという(近年は誇張表現だともいわれているが・・)
これまでになかった複雑なリズムと不協和音、従来のバレエにはない衣装と振り付けに、観客の多くはいらだち、ブーイングが起こった。一部の称賛派と大半の批判派の間には喧嘩も始まったというから大混乱だね。
振り付け担当のニジンスキーは、舞台で踊るバレリーナのために、舞台の袖で手拍子を打っていたという。まあ、いまでは違和感は感じないが、当時としてはクラシックの概念を超えていたのだと思う。
アレルギー反応を押さえ込んではいけない
新しいことの始まりには必ずアレルギーが発生する。アレルギーの語源はギリシア語の「allos(変じた)」と「ergo(作用)」だ。変化から体を守る免疫機能なのだが、組織的に過剰反応を起こすと実に厄介だ。
しかし、アレルギーの理由をていねいに聞いてみると、そこには、変化に対する不安やプライドを損なわれることへの感情がある。この感情を押さえ込もうとすると、アレルギーはさらに増発する。ここを間違えてはいけない。
まずは、これまでの成果や努力を評価し、会社を良くしたいという思いを互いに確認する。そして「何を目指しているのか?」「どうあるべきなのか?」を語る。ここが曖昧だから、「かもの大合唱」になるのだと思う。