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スティーヴン・キングの『トム・ゴードンに恋した少女』を一気に読んだ。お勧めです。

それほど熱心な読者ではないが、スティーヴン・キングの小説に惹きつけられる。続けざまに二冊ほどを読み、数ヶ月は読まない日々が続く。ところが、ある日未読の本に出会ってしまうと、読まずにはいられなくなる。

『ジョイランド』『ビッグ・ドライバー』を読んでから、数ヶ月ほど遠ざかっていたが、一昨日に『トム・ゴードンに恋した少女』に出会ってしまった。仕事がひと区切りついたときだったので、迷わず購入した。

イラストレーターのサイトウユウスケさんのカバー装画も良いですね。

6月の初めの土曜日、9歳の少女、トリシアは、母と兄とハイキングで出かける。ところが、あることでメイン州西部のアパラチア自然遊歩道から外れてしまう。気づくと道に迷い、奥深い森のなかに入り込んでしまったのだ。

助けを求めるが、行けども行けども森は続き、何日も彷徨い続ける。トリシアは無事に脱出できるのか?森のなかでは何が待っているのか?トム・ゴードンとは誰なのか?・・ネタバレになるので、これ以上は書かない。

緻密な構成、はっとする比喩、巧みな引用・・どうしてこんなに濃密な文章が書けるのだろうか?キングが著した『書くことについて』に書かれている答えはシンプルだ。たくさん読み、たくさん書き続けること、近道はない。

池田真紀子さんの翻訳も実にいい。トリシアの心の状態、森や動植物の様子、そして得体の知れないものを、生き生きと訳している。そういえば、ジェフリー・ディーヴァーの『リンカー・ライムシリーズ』もこの方だった。

モダンホラーの帝王と呼ばれるキングだが、この本はそれほどホラー感はない。それでもじわじわと恐怖が伝わり、読み手はただただトリシアの無事を応援することになる(たぶん多くの読者がそうだと思う)。

土曜日の夕方から読み始め、日曜日の昼過ぎには読み終わった。結末を知りたい気持ちとページが少なくなるのが惜しくなる、そんな一冊だった。積読本が山ほどあるけれど、しばらくはキングを読むことになるなあ。

こちらにも本の感想を書いています

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