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恋花粉
今年は花粉が特に凄いらしい。
しかも新種の花粉だ。
自然に発生したのか、人工的に作られたのかよく分からないが、“恋花粉”というらしい。
その花粉を吸い込むと目の前のものに惚れてしまうらしい。
僕は密かに期待した。
好きなあの子が僕の目の前で恋花粉を吸い込んでくれないかな。
しかし花粉は目に見えないから運でしかない。
出来ることはやった上で、運に任せるしかない。
あの子と一緒にいる時間を増やせばそれだけ確率は高くなるのではないか。
そこで僕は積極的にあの子をデートに誘った。
なんとかデートに漕ぎ着けた。
外にいた方が花粉が飛んでくるんだろうけど、外ばかりだと疑われそうだ。
映画、カフェ、そして夕方ごろに公園へいった。
ベンチで話していると、爽やかな風が僕たちを包み込んだ。
温かくて、甘い香り。
その瞬間僕は目の前に飛んできたバッタに目がいってしまった。
しまった、と思うより先に、バッタのことが愛おしく思い、僕はそのバッタを追いかけた。
なにやら後ろからあの子が好き好きいって追いかけてくるが、僕はバッタに夢中であった。