エネミー・オブ・ザ・サン（虚構の春） 川柳43句
雨の日と四暗刻に満ちる日と
タバスコの限りに赤い霊柩車
ヤンマーと思えなかった都市に雨
やきそばに視力すべてを確かめる
言語学講義の終わる四川省
さまざまなパン詰め込んで熱死する
伊丹家の金魚の部屋に金魚無し
この世界あの世界でのロキソニン
ジミヘンのまくらがえしに淋しい目
素読する黒木瞳の眼の話
噺家の燃やす地球に眠る仔ら
残像を残し共産圏の蟻
殉職の名詞をもらう雨のなか
フィヨルドに沢田研二の二を彫った
山善に飛び出し式の天使たち
若貴が何度虚構の春に来る
略図にもイソフラボンの無い家だ
劇つづくサンマーメンが絶えてなお
ヨーデルに世が終わるまであばらぼね
ぶらり形意拳の旅に鏡触れ
交番を鯖同然にもてなした
接続詞ひとつで終わる句を書けば
写字をして野球選手の城に着く
顎の名をハインラインが付け直す
空中のブラウン神父全図録
安全日まで仮構するジェフ・ベック
点描に柳田邦男眠りいる
客憎む本屋に偽のたこわさび
曽祖父が第三舞台所属中
点眼のあとも紫式部飛ぶ
レーニンのしじみをずっと剥いでいる
サバゲーに群れ芥川龍之介
大型の梨が見守る野球拳
松屋にて教育テレビみな壊れ
深爪の義兄弟来る春の闇
珍鳥が沈んだ沼の悲歌を詠む
童貞と童貞たちの骨密度
機械語が浮かぶアメリカシロヒトリ
線審の殺気を込めるマーガリン
雨上がり決死隊へのとらばさみ
ロコモコにこだわり抜いた聖歌隊
綿飴が高濱虚子の意識なす
地上からベース漫談消す遊戯
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