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  いかのおすし(愛)  川柳130句

バナナなど函館文字でしるしあえ

一文字が生麦事件から消えた

扇屋のベリーダンスに味噌なすり

海中の胡麻都市にいうひらけ胡麻

ア太郎のこころで「乱」のエキストラ

無惨やな電卓という詩歌の具

早大に愚問ひろげるまんじゅしゃげ

うどん粉と老いてゆく日の鹿苑寺

財閥のパラフレーズに芋を煮る

ジェット機におろかな鯛が似ているが

述語きめむかしばなしをすぐに書く

再話する一夜かぎりの乾電池

小笠原諸島のわたしたちの犬

しがらみをスノーボーダーから外す

蟹座からアスパラガスという数字

ジャイアンの彼方にオストアンデール

【悲報】から弥勒をはこぶ木の実ナナ

鳥人か卵がさきか手話つづく

集合のあるべき場所に枷がある

モイスチャーミルクのような二面性

隆法がよぶ男爵の統辞法

田園に死す象亀の足の痕

ネオナチの痒くさみしい句会閉ず

北京へとダダ療法の図を送る

脳の上いかのさしみのヘルメット

佐賀県にエントロピーの兎飼う

ゴルゴダにのぼる機械語復唱し

象立てりベスト・キッドの世界観

死の家の記録のそとに羽賀研二

パノラマ視蠟涙香山リカをなす

廃嫡をしてキャプテンの目をこする

ぬりかべをランドマークにあて嵌める

不条理のさんまを割っている場所へ

気孔とじひらき抱擁家族かな

ぶらぶらとしてラ・マンチャがここにない

たらちねの不沈空母に韮はえる

淀川 火の王国から糞掃衣

ガムランと思われているすもうとり

コーヒー屋らくだの首が飾られて

底辺を何だと思う秋津島

マウンテンパーカーという海びらき

ここでみるふたつが海野十三 月

信号の輝度をあらわすピザハット

傷口の交信局はどこですか

庭にない精鋭軍のギニア糊

ひれふしの言葉に佐川くんの肩

空間が死につつあって室蘭市

裏口にハドリアヌスの拭く什器

独学でケンタッキーの名を借りる

棍棒とこの世がふれるしゃぼん玉

たてなおす岸辺シローの明智校

墓碑銘にかりあげクンを彫りたしぬ

処女作に盲いたとおりブルガリア

たいやきがおよぐ世界の銀河消え

きのこ折れ南の島の川柳社

烏帽子ぬぐ超社会人R号

ナボコフにおろかな島のたれぱんだ

パニックにホワイトソース丼を持つ

天人の五衰水道修理業

乾パンがもしあるとして中野駅

自意識を大陸峠だとすれば

被術者が暗室とよぶさるすべり

滝行のあとだ凛々しいガンマ線

エンタシス野球中継所を襲う

典拠する猫の世界にいなり寿司

晴れた日に出典すると隻眼児

隻眼児うまれておでんとの祈り

セックスをしない日曜噴霧店

塁審のロストワールドまた失くし

当たり屋がしぶく中日ドラゴンズ

破天荒宮司のあける趣味の部屋

かさぶたが多摩川わたるどんな予知

西城のプリントゴッコされる劇

詩にあらず礫死体から芝田山

船長のニッパーというときほぐし

エロチック水天宮を覆う蝶

愛國に紀文があつてほしいだけ

茶碗蒸しとの世のなかの孔として

泥レスと孔子を載せて地球光

根の国のまんが屋さんをみる火口

寅次郎奮戦記での地球鳥

内面に横山ノックたちの門

反赤穂義士のランプが点いて消え

妄想に頭足類をえらぶ秋

石ノ森さんがさんざん虫を捨て

全能の桔梗屋が焼くたまご丼

乱世なり棒棒鶏のパーツ欠け

峰不二子などあらわれず言語論

酩酊のひと走りさる磁石塚

外の世へ磁石ばらまく若夫婦

マドンナの潜水艦にくわえる句

大洗海岸という塩ケーキ

ラッパ屋がとびぬけている干物狩り

干し首がチベットにとぶ新演技

デミソース吾妻ひでおの蛾をあつめ

なりふりに構う家庭のオロカメン

壜の名のひとつブラジル料理店

ストローが非のストローにみえてくる

東宝に妻の名まえの五円玉

コンドルとこの世はすでにここにない

ふいうちの読者がつねにスラックス

天皇がしばらく死なず知識の木

山梨にアットホームでないわかめ

やきとりの星に将軍職とだえ

グラタンの虚構を愛す活字工

ラジカセの栗の木ゆらす芸者たち

売春のところでハムが切れている

地下壕のあなたのためのところてん

ちょんまげのグループがくる斜陽まで

スポイトを少年王が激白す

句中句にしらじらじらと朝の陽よ

亀の子のたわしがすべてわたし哉

禁欲の大木凡人に凡人の句

レバニラとヨードチンキを美にむすび

神殿を不断につかう野比玉子

としおらが蟹饅頭をえらばせる

血祭りとチルチル飾る秘宝館

カルシウム皿ふえてゆく皿屋敷

全県をめかぶと略すめぶの会

ハンセンを共同浴にかえす北

アコギ焼き大和田獏の北枕

漱石のナゲットうばうビリーバー

あなたまであなた意識をはこばせる

ピラミッドつくってひらく夜の菊

じゃんけんに勝つと遠くにある那由多

電柱の文学論のまっさかり

管理室うしおととらの視線断つ

コーギーをたぶらかすまで紫雲英咲く

圓楽の死後水晶の夜の餅

沈黙をせず肉のある肉うどん


#川柳 #現代川柳
#詩歌 #文芸 #創作 #エンターテインメント #マドンナ #水晶の夜

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川合大祐
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