樽——あるいはモルガン・スタンレー 川柳26句
1.水に似た感情
象に似た心理あらわすための数
ガム拾う構造線の走る町
堕落した仏料理屋に由美かおる
シーベルトこの世の河馬がみんな消え
歳月をテーマパークで反射した
西棟にとつぜん偽史がやって来る
2.水に似た感情Ⅱ——写真川柳七題
カルピスに内と外あり全世界
炒めめし最後のヒトが去る前に
カレー屋のための新約聖書積む
教授らが仮に愛しておく数字
醤油瓶立つ天皇のいる地球
社会主義国家の味噌にYの軸
花火屋に飛び交った魏志倭人伝
3.水に似ていなかった感情Ⅲ——暮れる
峠から二重スパイの鞠おとす
魔女宅が述べられている銀の匙
大陸にいま煮えている巨大粥
七曲署員ジブリのぷをさがす
パロディーの南極に便座があった
稲刈りのあと土色の反宇宙
佐清に傍点を打つ投手陣
図書室で人間狩りのジープ待つ
猿丸のシブがき大を考える
奥山にたらこ怪獣哭いており
杜子春に技のデパート壊されて
兄妹の三葉虫をひろう旅
またひとつ赤木春恵を消して寝る
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