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死の世界の無供花  詩

 死について思いめぐらすときに
 アート・ブレーキーはどうしようもなく甘味で
 日曜の午前二時
 死について思いめぐらすけれど
 思うことのできない場所
 場所であらざる場所について
 俺の頭はジム・ビームにとろけているから
 ここには何も無い、と言ってしまいたくなる

 いまさら 無が無いことのパラドクスなのかい?

 蟻の鉢を持ってきてくれた人がいた
 蟻は実はこの世界に無いのでは無いかと
 俺の悲しみ・憎しみ・喜びが直覚する

 だから

 それこそが

 それらが〈無〉になった、と語ることが死なのかもしれなかった

 四十五年以上
 肉体を午前二時が通り過ぎていった
 これからも俺は俺を集約したものを失くしてゆく

 失くしたはてに無があるのか
 すべてが〈無い〉ものなのか
 もうしばらく思いめぐらせてみる

 蟻が穴を掘る
 鉢のガラスこそ
 死と呼んでしまってもいいのじゃないか

 ——映像はすべてが死なのだから、おそらくは

 アート・ブレイキーがまだ聴こえるうちに
 午前二時の 再演


#詩 #詩歌 #文芸 #創作 #ジム・ビーム


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川合大祐
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