同時代ゲーム（ワンダフル・ライフ）　　川柳55句

感覚も無いと答える月の船

ジャムパンの村で侵略者を待った

春雷の世界に釘があるくだり

発病者以外が触れるチェスボード

冤罪が軟球界につづく春

ブシドーの本に書かれた髭植機

煉瓦割る悲劇悲劇にわかつため

すかんちの伝記作者に偽名無し

脳死してサンボリズムに似た胡瓜

レーサーの檻に種芋投げ与え

背教者小町に落ちる春の星

コロニーの鮒を酔いどれ医がさばく

自来也の自涜に自我のめばえ出し

学名が同じ峰岸徹像

人参がみっつのアンチ・オイディプス

漫画家が蒸発をする都市に鳥

火のなかの温泉街を記憶して

流れ着く嵐が丘の在る島に

タナトスと植木等とともに在る

鯖缶がまったく同じ春の雨

郡内にいしいひさいち的な罠

源実朝号で走り出す

黒胡麻がロードムービー中振られ

江ノ島とあらわしているスパゲティー

ダイイング・メッセージにもブリキの句

牧童が荒俣宏逃す春

チョリソーをむしろ裸眼の家に置け

あぶらげが消えればアスカ・ラングレー

ホーキング博士の想う二毛作

雨のなかペスト映画の齣落とし

富士に立つ影のかたちがハルキスト

宣誓に合い挽き肉を持ち寄った

尼寺に声と現象との雨だ

天使らと交接中の村田銃

飛び魚の刺身太郎と飛び太郎

蛸壺の分母分子が浮きあがる

千葉大の側転中の春死なん

あわび屋が剣道場になる前に

鶴見家の愛に時間を膠着語

狩野派の天ぷら油かぶりつつ

ゆらゆらと言語学者の社会鍋

産経が低体温の教父撮る

やや長き綾波レイのくさりがま

春雨を訳すキリスト定型詩

武闘派のリンゴ・スターへしゃぼん玉

裏側へやずやのような国を引く

絵手紙の成田三樹夫を憑依させ

異母兄が助詞にまつわる会議中

江戸っ子がシンクタンクのシを希う

柏原芳恵と銭を投げ終えた

破綻した句で汲み上げている甘茶

雨あがる宇宙をぼくの手の上に

せんぶりの発揮をされるパロディー句

焼鳥のすべてが輪廻転生す

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