
FINAL FANTASY(門) 川柳101句
Ⅰ.旅の終わり 五十一句
囚人のジレンマを発つゆりかもめ
帝大の模型のほうへ陽が落ちる
アマリロのすずめをもらう銀河便
瓶詰の地獄に剥かれないバナナ
ヒューストン、ヒューストンへとこちら罰
こち亀と狂ったひとの季を重ね
野良犬の乾漆造というタブー
土間を掘るアルミホイルという忌み名
バタフライ・エフェクト封鎖する厠
狂人の降霊法にザブがある
春昼にただありあまるバインダー
春の闇電気水母の垢離をして
あながちを記す怪獣大図鑑
ボンカレー煮つつブラック・ジャックの毛
凶つ日に尾崎豊の予知夢消え
布袋屋の重力かかるしゃぼん玉
UFOをにくしみ深き人と視る
推敲が終わっただけのダダイスト
金髪の男芸者のしゃぼん玉
うららかなドリフターズの斜線引く
キューピーを意味するものとされるもの
五線譜がみはなしている昼の月
ガチャガチャをまわしきれない悪書店
村迂回われに性欲ありにけり
売春のそばでおろしているわさび
ハム切られ贋金づくり湯灌され
泪橋高校文芸部廃部
パンダ絶滅わかものの四つん這い
時頼はいないのだろう象舎朽つ
湯豆腐の論理におちてゆくカミュ
コントの台本ふきでる目玉焼き
ワトソンの烏帽子が消える春の雲
疑似科学として手淫者手記を書く
撞木鮫ばかりをおもう入信儀
植物の記憶がまじる溺れ谷
スタンド・バイ・ミーの像を捏ねまわす
失語症短歌の家に割れる窓
構造と力しかない猫まんま
カップルが翔んでいるのか春寒し
カリメロの豆腐炒めている聖画
教皇がグリーンランドばかり書く
秤屋にいっそう暗い春きたる
母屋から屯田兵の喃語集
梅茶漬埋めるマルコムX忌
思惟の象たたずむ泉重千代忌
拳法をまなぶ溥儀から陽電子
ガロアへの途に無数のすもうとり
煮干屋にピンポンダッシュする春か
あしたまた現実にあるナイアガラ
エッシャーがふたり髪切りデスマッチ
象を撃つ論理の布の織られたり




Ⅱ.終わりの旅 五〇句
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