G+(ハッピー・エンド) 川柳112句
遠心力をください朝が消える
秀忠の根性焼きの白書捨て
レトリック三部作から搦めとる
水葬をダチョウ倶楽部が逃げてゆく
ぷよぷよに給餌おこなう冬隣
秘密裡にクラスメイトが冷凍庫
まぶだちを放つブラック・ジョーク界
ぼくたちのコアセルベートから擬音
航空機たらざるめしを今夜炊く
焚きあげる現象界にないΩ
夫婦して箸わたしするエベレスト
陰暦のいつが越前水母の日
隕鉄をもらい誰かを好きになる
乾パンを焼くブラジルに死のう団
山頭火人形置く調教室
すぐに冬あたま時計の針狂う
暁の寺に風車の理論立つ
あぶさんの世界に生える笑茸
豚吉にメメント・モリをたくす冬
ブッチャーに硝子世代の厚い皮膚
石油王とのメビウスの環のたすき
なぞり書く八百八町鯔日記
韻文にあしか日記の途絶えれば
神さまがいる狐島洗車場
昇るのみ銃後の町の昇降機
戦況に貨物車走る午前中
積みあげたばらんの朝がくるパズル
せいうちの工場跡に泣きつづけ
碑にゴリラ踊っている写生
笑点とおなじ画面に処刑場
おだやかな薬害ひろめ秋の涯
すなめりにマクタガートの砂時計
砂時計すべてが狂う錦糸町
霊媒に干刈あがたの手毬唄
ロズウェルの時間のなかに焼餃子
アントワネットの唄から水餃子
冬の来て春老人に検事団
部外者のわらびに電子顕微鏡
国教の楡の葉おとす重力場
オプティカル通信室の漢意
オルテガとかんてんぱぱの分岐点
ユンピョウの隅から隅へ塗るラード
函数はうつくしいものビル火災
言葉塚へとマンダムの詩語そなえ
大君のスプレー缶が流れる日
閃光の映像フリーマーケット
卵屋に阿部完市の図を消して
たてじまのTシャツを着る老嬢記
ウガンダのたこ焼きを焼く老妓抄
二輪車がばらされてゆく雑ポルノ
ふいうちをかます惑星改造者
手旗にてブラッド・ピットらの湯島
環としての三島の芸者ワルツ閉ず
完全に知多半島に犯罪す
番長がひとりもいない章魚戦記
さつじんをみそ田楽に換える日は
そらに色ポケバイ・ブギを改詞する
トンファーの世をはばかって新カルト
落人のビルにやずやがとどかない
冬隣儒艮の絵文字打ちまくる
鯔の名をランドマークにつけず午
窯変のあとに独りの雅山
ペンチに狂って落葉とめどなく
マーガリン隊に中間色さがす
魔羅詰につかわれている紙粘土
被術者の席に原爆オナニーズ
江戸っ子の芋がおわらず黒魔術
ひとほろびひとつイーロン・マスク像
世界とはいわせんべいである徴
半ずぼん脱ぐサイレント硫黄島
山羊の世に虚数数える瞽女の劇
老残の宇宙中継するかもい
簿記の名をしらべていないジェット・シン
さらば駱駝トマトケーキのこされて
権八の想像力に拠る麩菓子
鼠蹊みな団鬼六をひき摺れば
岬 このスプーン曲がる鉄路果て
いかりもて合成紅茶書におとす
冬近し寒太のロジャー・ゼラズニイ
史としての東照宮のチャンドラー
ハードボイルドの句と句を打ち込めり
圏内へ令和豆腐をつきぬけて
ざざ虫無音あつまって或る視覚
錯視するギンギラギンに悟りなく
恋びとの烙印押され古都の豚
口唇期どのくちびるもドラえもん
ひとに餓えオーソン・ウェルズ焼きなおす
ロボットの星にふたつの木彫り熊
株式の冬木あずさの巻頭句
魚食してあたまのわるい半魚人
魚神から國大生にもどるドア
入り口をはいると鷹の井戸だった
うぶすなに新人王を撮って出す
フラミンゴ率いる軍がおおう空
武勲がぽんと出てくる超三時
食パンで占っているアカの会
斥力に温泉芸者憎みつつ
うつくしく妊婦あつまるガス公社
一族をスカトロジスト描写する
トレーラー・ハウスのねたで強請られる
のしいかを拷問しないほうのサド
破裂屋の千のナイフに千の夜
きょうも眠りあさし天皇家庭
さいとうとダイナマイトを湯掻くたび
巨尻して武の連綿は美なりけり
ホール出て夜空に桃色豚豚座
マシリトが創ったはずの雁の寺
水島を通行人がずっと待つ
奥様はおいででしょうかまるめ誤差
かまやつの遺した牙の反らせかた
終着の浜辺の忍者無芸帖
森永と云う変態のエピローグ