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レッド・ツェペリン 川柳108句

〈前口上〉 2020年12月31日午後1時、愚にもつかぬ川柳を書いていたら、Twitterで #大晦日108句チャレンジ  なるタグを見つける。それに触発されて川柳を濫造し、おせちの仕上げをし、風呂に入り、五味隆典観て、川柳を書き、了したのは夜の8時前。明らかに書き飛ばしなれども、時に飛距離が妙に伸びた句も数句あり、それらの句は勿論、すべて自分の産んだ句のために、全108句、大晦日のすべての句、ここに記す。


急行にデニムのままの遣隋使
月面で主語をなくした年の暮
妄想のヨーヨーを釣る亜細亜圏
廊下よりしょっぱいパンを焼きに出る
教壇に父の眼球のこされて
数の子を数えるときの風すさぶ
ペリカンに包まれている口唇期
ロボコップとの対局で氷河溶け
釣り堀でトーマス・マンを焚書せり
分身が句集のようなラッパ吹く
脚本の瑕を見つける鳥放つ
太陽へ向けてわたしのシーチキン
甥がみな犯人である目玉焼き
裁縫とチーズが終わる今世紀
焼肉屋テーマのたびに死ね五郎
冷凍の風船ガムが届かない
年末に七角形の種を播く
火蜥蜴をのばせる限り大晦日
秘密基地倒壊後から漬ける鶏
注射器の遠心力がぶんと云う
うつくしい死を考える雪かき器
しめ縄を愛さなかった裸者と愚者
エプロンに青い千円札入る
じっと見る富田常雄の液状化
スパナごと勃起をしない性器手に
わが谷にネス湖の有らず今夜雪
曇り窓により隠した海老フライ
なます切る談志が死んだ惑星で
受け身取る天皇制の六畳間
よく晴れたプラスチックの批評会
村医者の裔の中学生日記
水槽のごく簡単な壊し方
オレンジの樹を燃やしつつ大晦日
点描の画家を隔離す冬の虹
弥勒降り壊れていないヘッドホン
適切な単語で埋めよ無我の城
ミロを汲めここを世界にしたいなら
神智学研究会に烏賊の菓子
残存をするつぶ貝が道の上
神が死にアイスが棒の大晦日
星に手を平凡パンチ足場にし
秩序ある禅僧たちの体当たり
DJが壊した箱の中の猫
金星を見ているはずの鰻捕り
追跡者全員佐藤姓のまま
Amazonのレビューを消せず十二月
メビウスの輪を反社会勢力に
戦車戦赤いきつねがゆれていた
永遠の金魚二匹をなぜ憎む
ゴルファーが句風を変えてしまっても
ももももも助詞がみな無駄だとしても
追憶の亀をゆらしている橋で
丸木舟FRIDAY買う友を載せ
牡丹雪この世つらぬく幻灯機
狂院を出るまで在った麩洗い場
戦艦をどうねじっても字余らず
番長の妄想による哺乳瓶
社会人野球選手の焼く自伝
絵手紙に早口言葉書き続け
意味がある銀河鉄道馬連駅
カナダでの糞ころがしを潰す人
インク溶け人魚帝国衰亡史
異次元を覗く家でもごぼう切る
句に拠ってベートーヴェンのトを描く
発泡酒なき異世界の税理士ら
仏具屋に接触をする異星人
貴腐しつつ感性上の父南下
アフリカ史県道雪におおわれて
茶人らがドリル掲げている舞台
水蜥蜴きおくという字忘れ去り
ビヨンセがいやに叩いているごぼう
地底での松風焼のような手で
世界焼けそしてヒンズー・スクワット
走馬燈にも出なかったレンジャース
菓子類をばらまく場所の有意味化
由美かおる1の自乗はひとつの死
ベーリング海のケーブル切る魚人
食堂で三単現を目撃す
冬を征くブブカが家族葬だとし
俳優がいない精神分析市
分度器を鳥にたとえたほうが負け
父子ともに光合成をしない町
ペルム紀の将棋のような明喩法
舘ひろし吊り天井の部屋を出る
海沿いの烙印押しがバッハ聴く
適当にグルコサミンで建てる都市
蠅の絵かわからず家とともに焼く
琵琶法師へとさしむける粗い猫
転生のしたての猫を引く刑事
永遠になまこ貼りつく後背部
エジソンが辿り着けないひつまぶし
雪深し選球眼が悪いネロ
雷鳴と命名される聖子の子
発明史要約すると死んだ鮒
温度屋にふつうの画家が寄って来た
巻頭にあらゆる星の鍵の歌
感情も同時に消える料理番
村人をにくまなかったような棋譜
確率の峠が凍る以下同じ
踊り場をハローキティらが掃除せず
戦略を失っているドイルの絵
図にするとマーヴェルだった代官所
海の画に脚長蜂を接着し
ぼんやりと移項をすますスヌーピー
海老の句を今日も書かない窓に雪
心中と昇龍拳をまちがえて
大晦日螺子を三万本熔かし
惑星の小劇場の外にいる

2020.12.31 作句——様々なことがあった年の終わりに

#川柳 #詩歌 #108句 #大晦日 #文芸 #創作

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