華氏９１１（ネバーランド） 川柳60句
人の死よつくえのこけし掻きあつめ
アメリカの墓池に金魚をときはなつ
討幕家夫妻の馬頭がいななけり
ゆるやかに磁石くるわす木野まこと
搾乳の鬼のペーパーテスト終ゆ
二郎系ひとは惑星にて死ねり
タンカーに柿喰う客が消えてゆく
にがうりを名づけてまわる不死の人
約束の土地にフロイト彫りすすむ
水上の彫師があびる秋の蟬
客としてエヴァ・ブラウンの粘土こね
澱こそぐ鴻一郎の叫びごえ
電話魔のずっとうしろに大黄河
股裂きをアルジャーノンにくりかえす
さんま焼くアルジャジーラの画素粗し
ローソンにおびえたままの半島記
鶴の名がつきかけているアサヒペン
闇市にビキニ環礁図の剥がれ
ミロンガの時計くだける暑い秋
遷都して小池一夫のたたずまい
デトロイトたてにならんだすもうとり
日芸のヒエログリフを読むと秋
トー横に唯野教授の焼くたまご
はに丸が裁かれる日の意味の牛
牛骨を東條ちゃんの児にわたす
鍋辰が忍びがえしをつけてから
そして死に至るキャンディートイひらき
陽物がケメ子のうたをつきやぶる
密猟者たちが大山のぶ代聴く
むらさきのひかりかがやくどれい狩り
東鳩をあつめバス停なだれたり
いつの世に消えあらわれるごまだんご
真景のだんご兄弟賞を待つ
世界屋のあなごと同じポリバケツ
大豪雨耳コピをする身のひとつ
ガス燈が猿股でない時の崖
イディオムのつもりで月を拝みつつ
拝み屋のフルートばかりここは雨
心理的効果をねらうサルマタケ
砂絵師がアクロバットの猿の星
おとがいの醜いひとが死ににゆく
夏過ぎて手話の勝手にシンデレラ
雨やまず手塚治虫の駄作よむ
よみ人がバルタン星に還る糸
雨のおと欲動都市のフットサル
チョーさんの自慰の場面に秋の雷
ちぎれゆくＮＨＫのうどんの環
オリーヴをじぶんいじめの椅子に置く
雨傘にかかわっている映画の魔
脳移植雨の動物園を出る
寿がきやにみえなくなった武芸帖
語順から柴田勲がだだ漏れる
豚まんが象徴界にあると雨
そこそこの想像界に麦茶漬
ツナ獅子を現実界に置く巡査
重い米エモい任天堂の歌詞
可視領にひとつのバレ句あまりりす
渦しおとこの世をつなぐ土井たか子
豆腐屋の描くアングルに四季みだれ
昭和屋にオブセッションの鹿がくる
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