第三のジョン・レノンの忌(斧・琴・菊) 川柳77句
Ⅰ.佐武の首 二十二句
父を成す言語野に雪ふり続け
幣を持つ不良少年らの尾行
恒星が巨大な星のマングース
シベ超の偶然短歌さがし雪
ソビエトの楢山節を誤考する
クリスマスソングに春樹解体す
二所ノ関部屋の便器を出品し
鯖缶をだれも盗まずレノンの忌
準急にふえるわかめを抱える子
法華経を厨に置いて妻愛す
妻愛せ零次元から野球盤
冬桜詠めば稲中卓球部
脾臓捨て手塚治虫のひどいギャグ
校庭にギャング映画の終わるとき
脳の外越前水母再生し
建国の碑にぷよぷよの碑を混ぜる
ファを吹いて伝奇小説読み了える
原人とむらさきいもに塗る暮色
海岸に特捜班の短歌棄て
犬懐き暗黒映画観て帰る
ガメラの死世に一滴の不凍液
液状化都市に中学校ひらき
Ⅱ.佐智の1/3の遺伝子 三十三句
緘黙の世界のショートショート集
ブルガリアから断罪の絵の葉書
べっ甲が割れる少年チャンピオン
暦買う市営住宅崩るる日
絵手紙にポイセンチアを腐す会
白鯨がみえない家に帰る刑事
人工の知能に田中真弓の偈
都市ゲリラたちが冬日に螺子を買う
野々宮のキリンレモンの心理読む
帝政の調理人らが正史読む
人の死よ映画空間ひろがって
台本を無常の月に書き換える
網脈に蛭子さんちの大氷河
スコップが鷲をあらわす理容院
発狂の宇宙に桜金造図
年の瀬の受像機が在るアマゾン湯
つちのこにジャングル風呂の名前つけ
中国の郵便局を出てみぞれ
伊勢丹の中華料理をやり直す
探査船マリア・カラスが死んでから
レノンの忌糸井重里水に浮く
擬夫人が水没都市で切るきのこ
板前を吊り込む冬のきのこ雲
冬晴れて北の電波の届く庭
陰翳の伊丹十三飲酒する
巣箱へとウディ・アレンの喘ぎ声
人間を狩ったスペイン作文す
靴を買い始原社会の海苔を焼く
ブルーザー・ブロディの喪を明けとばす
卒塔婆抜ききょうもなんにもしなかった
支那竹を数えてキャノンボールの日
デバッグの答えをさがす雁の寺
ジャムパンの名前を付ける父病みて
Ⅲ.佐清の他人の顔と顔と顔を持つ第三者 二十二句
水槽に心理試験のファンアート
チベットの円周率に泣く妻と
漠然と詩劇につかうがんもどき
餃子屋に凍てつくコモドオオトカゲ
虚人らが東京タワーから不在
襲わるる山田太郎の発電所
パドックに原発漫画描き換えて
客体の老人が居る偽プール
短日の五重ノ塔にQ太郎
囚人の家に麩菓子を持ってゆく
ロボットを畳んで平家物語
雪のなか岡井隆の正露丸
騎馬戦を生姜農家がつづければ
アメリカに木村一八の写真撒く
具象画のチーズのうえに或る怒り
人間の意味性を持つ忍者像
レノン忌に擬態つづけるおかひじき
戦争を蒸発室の人と待つ
火の海に白熊映画編集し
牌を買う野菜人口狂うなか
位牌無きパン屋の電波傍受して
熱い海人間原理終わらせる
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