松下幸之助と『経営の技法』#10
「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。
1.2/25の金言
多くの人は目の前の広い道を無理に外れて歩いてしまうから、なかなか成功しない。
2.2/25の概要
松下幸之助氏は、以下のように話しています。
成功するためには大道を歩けばよい、目の前にある畦道を通るからなかなか進まない、という結論に対し、その過程で説明しているのが、「会社と運命をともにするという気持ちを、自分の心に植えつけ信念化することが望ましい。そうすれば、その人の存在価値というものは非常に強くなり、又その人の周囲をも感化することができるわけである。」成功者は、このような人たちの中から生まれている。
3.内部統制(下の正三角形)の問題
社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
これは、社長自身のリーダーシップの問題ですが、会社の中の管理職や役員のリーダーシップにも当てはまるでしょう。
ここで、特にポイントになると思われるのは、会社との一体化と、周囲への影響力でしょう。
経営は人を動かすことですので、リーダーに統率力が必要なことは当然です。そして、リーダー論が盛んに議論されているとおり、リーダーの素養やテクニックには様々な要素が含まれます。
その中で、松下幸之助氏は、リーダーと会社との一体化を特に重視しています。
経営の観点から見た場合、まずは経営者やリーダーが会社と一体化しなければ、従業員を惹きつけられず、その力を引き出すこともできません。経営者やリーダーが会社を背負っているからこそ、従業員も安心してついてきます。経営者やリーダー自身が、会社に対して距離を置いているような醒めた関係を見ると、従業員も身が入らないことは、容易に理解できることです。
さらに、これをリスク管理の観点から見た場合、特にリスクセンサー機能については、体を覆っている神経と同様に、全従業員がこれに気付くべきです。そのためにも、まずは経営者やリーダーが会社と一体化することが重要になります。
このように、リスク管理と経営は、一体なのです。
4.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
さらに、ガバナンス上のコントロールとして、株主による「適切な」コントロールも期待されるべきです。
それは、会社と一体になって会社を背負ってくれるリーダーを探し出すこと、に尽きるでしょう。会社を背負う自覚を持ってもらうためには、投資家としてできることも限られます。ガバナンス上のツールも、社外取締役や監査役のチェック、財務状況のチェックなど、経営者の行き過ぎや不正をチェックすることには向いていますが、気概に欠ける経営者にやる気を出させ、責任感を抱かせることには向いていません。
欧米での経営者の給与が高額になっているのも、このような背景があるかもしれません。
5.おわりに
松下幸之助氏は、経営者の在り方を論じることが多くありますが、ここで示されたことは、会社を背負う気概だけでないでしょう。
経営者が会社と一体化することの、その他の効能は何でしょうか。
どう思いますか?