松下幸之助と『経営の技法』#100
5/25の金言
魂をこめてつくった新製品は、どう使われ、どう感じられているのか。
5/25の概要
松下幸之助氏は、以下のように話しています。
とにかく新製品を出せばそれに付いて回ることが大事だ。初めての品物を売った商店に実際に行き、実際に店に置いている様子や店主の感想を確認するだけでなく、その商品を購入した顧客まで訪問する。
そういうようにズーッとやれば、仮に不良があればすぐにわかるし、先方も満足するし、失敗を重ねるということは絶対にありえない。しかしほとんどそれをやっておらない。電話でも聞いておらない。これは、自分が魂をこめてつくった品物を人に提供して、その人がどういうふうに使ってどういうふうに感じるか、ということに対して興味のない証拠だと思うんです。
1.内部統制(下の正三角形)の問題
まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
顧客の感想やアンケートを集めることは、近時、随分と当たり前のことになっています。さらに、いきなり大々的に展開するのではなく、パイロットと称して試験的な販売やサービスを開始する手法もあります。マーケティングの基本中の基本でしょう。
そこで得た意見や情報は、商品やサービスの見直しに使われますので、ビジネスモデルの改善や、PDCAサイクルを回すことに繋がります。
さらに、特定の商品やサービスだけでなく、会社業務全般についても、同様の検証プロセスを導入していくことができれば、それこそ、会社全体でPDCAサイクルが回る、ということになり、会社の体質が強くなっていきます。
このことは、実際に商品やサービスを提供している従業員にとって、特に悪い評価があった場合、決して楽しいことではなく、一時的にモチベーションを下げてしまいます。けれども、例えば仕事の完成は、商品やサービスの提供開始ではなく、顧客からの意見や情報も踏まえて改善され、品質と評価が安定した時点をもって完成とするなど、モチベーションを下げないような工夫も、考慮すべきでしょう。
2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
投資家である株主と経営者の関係で見た場合、経営者の素養として、このような改善やPDCAサイクルを、組織的・プロセス的に会社組織内に埋め込み、機能させるべき能力も、ポイントの1つと言えるでしょう。経営者自ら、「あれはどうなった?」と確認しなければ検証されないような状況では、会社の規模が大きくなるにつれて、検証が疎かになっていくからです。
3.おわりに
松下幸之助氏の言葉は、ビジネスマンの心構えとして話しているようにも捉えられますが、会社経営の場では、会社組織自身がこのような心構えを持ち、会社組織自身がそれを実行することが大切ですので、ここではこのような組織の問題として検討しました。
どう思いますか?
※ 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。