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2019-05-07〜|詩のまとめ

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2020年12月の記事一覧

風切羽

身体を虚空に解き放てば
夜の闇に滑り落ちていく
宇宙の色に染まった暗闇の中で
目を凝らせば 星だけが瞬いて
冷たく地上を 照らしている
遠い彼方にある孤独が 掴みきれないほど
とりとめもなく 手からこぼれ落ちていく

その親愛を その情愛を
今もまだ 胸の奥に燻らせて
吹き荒ぶ風の中を
息を切らせて 駆け抜けていく
今はまだ その呼吸を止めずに
生き抜くことだけを考えて

星々が瞬く宇宙の涯で

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夢路

その人が歌うとき
冬の香りがこの肌に満ちてくる

甘い憂いも朝目覚めるときには消えていた
盲目の少女が歌う
その表情の柔らかさに見惚れていた

夢を見る眠りのうちには
とめどない涙だけが溢れて
聞こえてくる言葉などにはもう
振り向く余裕などなく
振り返る理由などなく
その衝動に 意味などなかった