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2019-05-07〜|詩のまとめ

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2020年9月の記事一覧

命燃ゆ

一雨ごとに夏の匂いが遠ざかり
秋の気配が濃くなってゆく

部屋の隅で小さな命は燃える
魂をくゆらせ
柔らかい花の香りを漂わせ

揺らめく灯りに 昨日の夢を見る
不安 恐れ 悲しみを
心の底に彷徨わせ
行く当てもなく

部屋の隅で 幼子は寂しい夢を見る
儚いもの 翳りのあるもの 永遠に続くもの
夢に見る母の面影
それらの何も 魂の慰めになりはしない

燐光

夜の隙間から 入り込んで逸れた
誰もいない夢
見ていると怖い夢

裏側には闇がある
分かっているはずなのに
理解出来ずに 手を伸ばす
仄暗い水面に映る 青白い肌の女
燐光が微かに煌めいて
もうこの世のものではないと知る

微かな肉体
柔らかな身体
触れると消えてしまいそうな
あなたの肌が感じ取れた最後の
風の静けさ