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2019-05-07〜|詩のまとめ

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2020年7月の記事一覧

引越し

過ぎてゆく季節ばかりが永遠なんだな
振り返っても誰もいない
がらんどうの部屋
湿っぽい歌が少し寂しそうに
いつも聞こえていた

今ある風景を閉じ込めて
切り取ったまま
次の季節に持っていきたい

どんなに寂しくても
どんなに明日が 遠くても

魂は何度も生まれ変わって
次の季節を 生きていく

不眠症

身体から涙が溢れでる時はいつでも
ほんの少し痛々しいブルー
最果ての地はいつでも淡く 遠く
優しく語りかけてくる
甘さを捨てた心には
心のうちにあるものも 今はもう必要ない

今はもう必要ないもの
履き潰した靴
背中に背負って使うバッグ
飲み干した後のグラス
それらの全て
淡くくすんだブルーに覆われてる

浴槽と常温

眠れない夜には
白い鳥 羽ばたいて
浴槽の中に沈んでいく
脚のない鳥は
飛ぶことしかできずに
不器用に風に乗る
眠れずに

息苦しいのは
闇に降る雨と
病んだ心と
昨日見る夢

白い翼も
今はただ しんに寂しいぞ

白っぽい翼
虚空にはためかせて
消えていく
青い天井から降る
天使が見た夢

生温い呼吸の中
バスタブに沈めて
温かい水の中は
音もなく
今はただ しんに寂しいぞ

宵闇

甘く湿った風が吹いて
時間だけが静かに流れる
畳は乾いて主人の帰りを待っていた
畳の上に西陽が長く伸びて
細くなり消えていった

一瞬の鋭いきらめきに
目に映るすべてのものが 儚く淡く弾けていった
ガラスの縁についた 優しい泡のように