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2019-05-07〜|詩のまとめ

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2020年5月の記事一覧

気怠い空気は甘く
遠くの町にも靄がかかり
雲は甘く 重く 垂れ込めてゆく
隣にいるのに憂鬱で
「耳鳴りがする」なんて嘘をついたら
気分はささくれだっていた

空は遠雷を待っている
風を孕んで向こう側に連れていくような

夏に起きた色々の
それらのすべては湿っていて
揺れるスカートの色にさえ
意味を持たせて這いつくばらせた

溶け出す日々が緩やかに甘くなればなるほど
いっそのこと
溶けて

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白い光(希望とその不安)

白い種を闇に蒔けば、
不安だけが限りなく膨らんでゆく。

肺病、熱病
病んだ、焦げてるやつ。
それらすべてはお呼びでなく
浅い呼吸を繰り返して、
もうずっと焦がれている。
停留所にバスが来る夢

足の裏は汚れ、瞼に血がこびりつき
ただ痛いほどの鼓動を感じ
震えていた
もう長いこと、
あまりの苦しさに目を閉じていた
色覚はなく、
ただ白い光だけが溢れていた

窓辺に座り込み
夜の風を身体

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夢の匂い

疲れた心に寄りかかり
目を閉じて耳をすませば
いつでも季節はそこにある

眠りの縁で宵の風が頬を撫でても
私は返事もしなかった

何度放っておいても季節は巡って
今日がやってくる

昨日出会うはずだった今日
今日見たはずの明日
同じように見える毎日の中で
確かにそこにあるもの

風の流れ
宵闇の匂い
乾いた風が吹いても
私の心はここには無く
昨日見た夢の続きや
明日のお天気のことを

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モザイク

遠くで唸る微かな羽音のような
耳に残る振動
あれは
ヘリコプターの旋回する音じゃなかった

カーテンの隙間から入り込む日差しに
畳に落ちる影に
扇風機に絡まる糸屑に
全てに絡みついて
夏の気配が濃くなっていく

分厚い 重たげな 翼の羽ばたき
ねっとり旋回している そのうねり
空気に吸い付くように
気怠くかき混ぜられていく