気怠い空気は甘く
遠くの町にも靄がかかり
雲は甘く 重く 垂れ込めてゆく
隣にいるのに憂鬱で
「耳鳴りがする」なんて嘘をついたら
気分はささくれだっていた

空は遠雷を待っている
風を孕んで向こう側に連れていくような

夏に起きた色々の
それらのすべては湿っていて
揺れるスカートの色にさえ
意味を持たせて這いつくばらせた

溶け出す日々が緩やかに甘くなればなるほど
いっそのこと
溶けて全部なくなってしまえば良いと
投げやりな気持ちになっていた
あの頃は
ただそれだけを抱きしめて生きていた