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2019-05-07〜|詩のまとめ

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2019年8月の記事一覧

水の炎

夏の終わりに目を閉じれば
不思議なほど心が安らいでゆく
ベランダに降る雨
行き場のない辺りを彷徨う
あてどない魂に
ゆっくり水が染み込んでゆく

眠りにつく前
私の身体は小さな白い骨になる
灰になる

魂は幻想のうえ
滴り落ちる水のうえ
#詩 #現代詩

遡上

言葉は川を遡る
深い眠りを目指して泳ぐ
いつか泳いでいたように
かつて魚だった時のように

魂は肉体を離れ
言葉に別れを告げ
暗い海を目指して泳ぐ

人が眠りにつくまで
果てしない海は瞼の裏に広がっている
子宮の中に沈む海
眠りにつくまで
その海の中で浮かんでいる

八月の夢

夏の色は遠くて
昨日見た夢の色は淡い
ぼやけた輪郭から隙間に漏れ出る色
鮮やかな八月
甘い祈り
ガラス瓶の底に溶けた
ガムシロップの 溶け残り

ガラス板の上を行き過ぎる秒針
透明な影に照らされて
光の中をゆっくり通り過ぎる

目だけで合図をするとき
言葉は意味をなさない
#詩 #現代詩