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2019-05-07〜|詩のまとめ

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2019年7月の記事一覧

Heatwave

赤とオレンジのグラデーション
冷たい風 吹いて
夕暮れ カラスが低く鳴く
遠い記憶
微熱のまま弄んだ
やる気のない 力のない
どろっとした感情を抱いて
夕暮れは赤く滲む
真っ赤な血の色 目の奥で透き通った
午後も終わりの 微熱の風
#詩 #現代詩

網膜と青空

思うことをやめると
感覚だけになる
風の音
風が頬を撫でる感触
空気の匂い
日差しのきらめき
それだけになる
肉体にあるのは感覚だけで
それ以外は全て手放していた

夏はいつもの翼で
蒸れた空気の中を突き進んでいく
後には晴れた青空だけが
網膜に染みていく
#詩 #現代詩

ラウンジ

夜の中で
雑踏に紛れて
光に向かって並んで歩く
浮かんだネオンサイン
街灯はぼやけて
遠くまで並んでいた

ぽつんと置かれたベッド
空調で冷えた部屋
ブラウン管テレビ
ブラックライト付きの風呂
それらのすべてが懐かしく

鍵をもらって歩く廊下
夜の中で静かに

若さは血のように溢れてまだ
当てもなく彷徨っている
#詩 #現代詩

火雨

かりそめの平和を夜で包んだ午前3時
草木はまだ暗い
平成は終わった
新しい時代の記憶はまだ訪れない
まだ遠い夜をいくつも越えて
まだ暗いうちに
火の粉が舞っている
降ってくる
火の雨が

火雨の中で人々は何も考えない
もう感じるのはやめて
各々に課せられた使命に従って動き出す
心の命ずるままに
#詩 #現代詩

静脈

雨は私の記憶を奪っていく
言葉を忘れていく
濡れた地面に漂う静かな雨の記憶が
私を苛立たせる
かすかな記憶を頼りに紡ぐ
暑い夏の記憶

腕の血管から抜かれた血
白く固まって
肌の上で血液になる
採取されたスピッツ管の
半透明ごしに赤い色が並べられていく
毛細血管の中で愛が震えて
永遠に消えない
#詩 #現代詩

欲望の翼

愛してる僕の堕天使
白と黒の世界で生きてる
今日も明日もハマってた
頬を濡らす涙
乾いた心
精液
欲望の翼
手にべっとり汚れた世界のまま
愛してる
無邪気なまま
眩しいほど影はくっきりと黒い。

水色の風

夏の色を薄めた風が頬を撫でる
湿った雨の匂い
少し軽いまま
西の方へ吹き流されていく

今日の哲学は温い
飴色の部屋に残した
近くの自販機で買った
ミルクコーヒー

外の空気は風をはらんで
いくつも通り過ぎていった
夏を押し流すように
気の向くまま

Cold Beat

背中に腕を回す
いくらでも眠れる
疲れた心臓は温かい

血液が身体の中を巡る
行き場がないと思っていたものが
ここではきちんと機能している
無駄な血は一滴もない

肌が触れ合えばいくらでも眠れる

連れて行って欲しい
眠りの世界へ

アパート

夜明け前の青白い感覚
サイレンの耳障りな唸り

生まれつき残酷だから
いくら生まれ変わっても傷つかない

生ぬるい肌
脳髄まで晒されて
生への欲求だけが残った
触れられる感覚だけが鋭敏になっていく