安心感
子どもについて、もう一度、初心に戻ったつもりで、学んでいる。空いた時間に、少しずつ少しずつ。そうしていると、つい自分の子育ての振り返りもしてしまう。
息子の子育てに悩み、頭を抱えていた頃、「わたしの子育て、失敗ばっかりだね」って、泣き言を娘に漏らしてしまったことがある。娘は中学生だった。そうしたら、普段口数が少なく、穏やかな娘が、声を荒げた。
「母の子育ては、失敗じゃない。わたしを見てよ!わたし、しっかりと育ってるでしょ。ただ、今までの母の子育てが、〇〇(弟)にあってなかっただけ。それだけだよ。」
その言葉に、思わず、泣いてしまった。娘はわたしを抱きしめて、何度も背中をさすってくれた。大きくなったのは、背丈だけじゃなかった。張り詰めていた気持ちに、うれしさが加わって、あふれ出した。もう少し、がんばれる気がした。
それから何年もが過ぎ、今も息子にあった子育てを、試行錯誤しながら、続けている。娘は21才の大学3年生。息子は18才の高校2年生になった。すでに、同い年の子たちからは、一年の遅れがある。わたしからしたら、一年くらい、大したことがない。けれど、息子にとっては、大きな大きな遅れらしい。
気にするなと言っても、無理なので、そっとしておく。きっと、この一年差の感覚は、歳を取るごとに、小さくなっていくはずだ。ただ、中学校卒業してから高校に入るまでの、息子が過ごしたあの一年間は、きっと宝物のように、息子の中に残るだろう。
最近、子育てでの後悔のひとつがなくなった。
不安がとても強く、失敗がとてつもなく怖い息子に、なるべく先々のことを知らせ、失敗をあまりしなくてもいいようにと、気をつけて育ててきた。それが、息子の世界を狭くし、チャレンジ精神を削いできたかもしれないと、ずっと後悔していた。
でも振り返ってみたら、それはとても必要なことだったんじゃないかって、気がついた。そうしていたことで、息子は安心して、日々を過ごせていたように思う。もしそうしなかったなら、早々に、家に引きこもっていたような気さえする。上に、姉がいたことも幸いだった。息子は、娘からいろんなことを、見様見真似で学んでいたようだから。
安心感って、大切だ。それがなくては、何かやってみようと思えないんじゃないだろうか。好きなことはやりやすい。でも、ちょっとハードルが高いことも、安心感があれば、挑戦しようって、思える気がする。
息子は成長していくうちに、経験値が上がってきて、怖いことも不安なことも減ってきたようだ。けれど、まだ必要な時には、そう、本人からのリクエストがある時には、わたしは動く。息子を、世間の常識に当てはめたり、他の誰かと比べない。そうしたら、うんと楽になった。
息子のペースで、大人になってくれたらいい。穏やかな心持ちで、これからも息子を見守ろう。