雷さまとお留守番
ゴロゴロゴロゴロ…
雷さまだ。
お昼過ぎ、いきなり空が暗くなり、ゴロゴロと鳴り出した。慌てて、洗濯物を取り込む。
セーフ!
空はますます暗くなり、雨がポツポツ降り出した。と思ったら、急に勢いを増し、大雨になった。雨が窓ガラスを強く打つ。
ピカッ!と空が光る。少し遅れて、
ガラガラドッシャーン!
大人になった今でも、雷さまが少し怖い。息子が同じ部屋にいてくれるから、ちょっと安心。息子は、ソファでうとうとしている。この状況でも寝られるんだ。すごいなぁ。
雨がますます激しくなってきた。
子どものころ、たったひとりで留守番したことを、ぼんやりと思い出す。たしか、12才ごろの夏休み。怖がりのわたし、大家族の我が家、ひとりっきりになることは、ほとんどなかったし、そうならないようにも気をつけていた。でも、この時はひとりだった。
わたしは、縁側の窓に手を置いて、外を眺めていた。誰かはやく帰ってきてと、強く願った。
雨で窓が洗われている。庭先では、大粒の雨が跳ね上がっている。あっという間に、見渡す限りがずぶ濡れだ。雨で全てが霞んで見える。ここに、わたし、たったひとり。突然、ものすごく怖くなった。後ろを振り返れない。
だから、立ったまま、ずっと空を見ていた。時折、稲妻が光る。光ってから音がするまで、数を必死に数えた。数が多いほど雷さまは遠いのだと、誰かからきいたのだ。稲光がするたびに数を数えて、そんなに近くじゃないとわかって、ホッとした。後は祈った。雷さまがうちの家に落ちませんようにって。
そうやっていたら、小一時間で雨は止んだ。空が明るくなって、お日さまが辺りを照らし出した。もう大丈夫。わたしは、ゆっくりと、後ろを振り返った。
ここからの記憶はない。まぁ、ここまでの記憶も曖昧なもの。
思い出から戻ってきたら、空が明るくなってきた。なんとなく写真を撮りたくなって、一枚、パシャリ!まだ、小雨が降っている。
雨が気温を下げてくれたみたい。窓を開けたら、ちょっと涼しい。トンボやスズメが飛んでいる。もう、大丈夫だね。
うとうとしていた息子は、ぐっすりだ。幼い頃と変わらない寝顔。
わたしは、ゆっくり静かに、立ち上がる。