おかあちゃんとおばあちゃん
わたしの幼いころのはなし。
まだ、母と祖母が仲良しだと思っていたころ。
忙しい日。おばあちゃんがため息をついて、何気なくつぶやいた。
「おかあちゃん、おしりが重いのがいかんわぁ。(腰が重いのがいけないね)」
そうかぁ。いかんのかぁ。んじゃ、後でおかあちゃんに教えたろ!
わたしはそう思いながらも、すぐに忘れてしまった。
別の日。お客さんがあった日。今度は、おかあちゃんがぷんぷんしながら、独り言。
「おばあちゃん、できのいい野菜は、すぐに人にあげちゃう。うちはいっつも残り物。そういうとこ、いかんねぇ。」
そうかぁ。いかんのかぁ。んじゃ、後でおばあちゃんに教えたろ!
今度は、忘れなかった。おばあちゃんを捕まえて、得意げに話す。
「おかあちゃんがね、こう言っとったよ!…」
おばあちゃんの顔がみるみる曇り、終いにはとっても怖い顔になって、わたしは「あれっ」って思ったけど、言うと決めたから、今度はおかあちゃんとこ行って、おんなじように、おばあちゃんのことを話した。
今度は、おかあちゃんが鬼みたいになった。「なんでそんなこと言うの!」って、おかあちゃん。
そんで、全部話したら、「そんなことを言うもんじゃない」って、おかあちゃんからきつく叱られた。でも、わたし、なんか悪い事したんかな?よくわからない。
ただ、その日を境に、おばあちゃんとおかあちゃんが、お互いに何も話さなくなった。「ムウちゃ、おかあちゃんに言っといてな」とおばあちゃん。「おねえちゃん、おばあちゃんに言っといて」とおかあちゃん。うーむ。
何日も何日も、それが続いた。ふたりは仲良しじゃなくなった。わたしも困った。めんどくさい。それで、ようやく、何かとんでもなく悪いことをしたって、わかったんだ。
でも、なんで?
いかんとこは、直したほうがいいよねぇ。おばあちゃんもおかあちゃんも、わたしには「こうしたらいかんよ」って言って、わたし「そうかぁ」って、直す。おばあちゃんなんか、そうしたら、ものすごく褒めてくれるのに。そんで、もっと仲良しにもなれるのに…
なんで、おばあちゃんとおかあちゃんは、仲が悪くなるんだろう…
わからん。わからんけど…
でも、もう言わんとこ。叱られるのは嫌だもん。めんどーなのも嫌。ふたりが喧嘩しても、わたし、どっちの味方にもならんもーん。