マイメン≠my man
私にはマイメンとお互いを呼び合ってる男友達がたった1人だけ存在する。
大学1年生のバスケサークルの夏合宿のバスで初めて出会い、実は同じ学部学科だったと知り、そこから3.5年間ずーっと一緒にいたNだ。
Nは身長180cm位で目つきと酒癖がまじで悪い。飲みカラオケが好きで自分もそこまでお酒は強くないのに場を盛り上げるために気持ちで爆飲みして盛大に吐く。ヒップホップとタバコが好きで、ダボっとした服しか着ない。
普通にここだけ聞くとガラが悪すぎる。もし知らない人なら100%無視する。
けど私はここから予想もしない結末を迎えることになる。
大学1年の秋、英語のクラスまで同じになった私たちはついに毎日顔を合わせるようになった。いつの間にか私は隣のバスケサークルの男に片想いしている話をNに相談し、Nはサークル内の女の子を狙ってる話を私に相談する戦友みたいな関係性になっていた。
結局Nは付き合い、私は見事に振られて終わったけど、フラれた日も朝までカラオケでファンモンの告白とかケツメイシの仲間とか歌ってくれて彼なりに励ましてくれた。程なくして私は全く別の人と付き合ったけどちょうどその頃Nは別れた。
サークルでcolor runに行った時はみんなが私の誕生日をサプライズでお祝いしてくれたのに、Nと私はカラフルな服のままふざけて一緒にお台場の海へ飛び込んだ。この頃から私たちは誰から見てもわかる「マイメン」となった。
すぐ図に乗るNに対して「お前調子乗んなよ?」と言えるのも私だけで、周りは私たちが付き合えばいいのにと口を揃えて言ってきた。でも私は男女の友情は成立することを証明してやる、そんくらいないと強く言い張っていた。
大学3年生の時はお互い好きな人すらできず、口を開けば彼氏欲しいー彼女欲しいーと言い合った。漫才コンビみたいな阿吽の呼吸で始まるしょうもないLINEでバカ笑いするのは日常茶飯事。気まぐれなNは飲み会から家までの帰り道に電話をかけてきてそのまま朝まで話すこともあった。4人で行くはずのスノボが紆余曲折あってサシスノボになったこともあった。2人でも行こうと言ってくれたのは向こうだったが、実は結構嬉しかったし付き合ったら楽しいかもとあらぬ想像をしてみた。
就活の時も自己・他己分析と称してとことん語り合い、支えあった。あまりにも言うことが的確で、女友達よりも私のことを理解しているのはNだと思い知らされた。だからNが第一志望に落ちた時は電話一本で駆けつけて今度は私が励ました。
でも私の感情が揺らぎだしたのはこの頃だった。
4年生の夏何人かでドライブに行く予定がスノボの時と同じく2人になりかけたのに、2人ならやめとこと言われた。私はまたサシで行こって言って欲しかったけど、うざがられるのが嫌で「それな〜めんどいしやめよ」と強がった。
なのに同じ日、私の仲良い女友達とNのストーリーには同じ画角から撮られた夜の東京タワーの写真がアップされ、初めて心がざわついた。こんな時の勘が良すぎる自分も嫌いだが、その後見事に2人は付き合った。しかもNからじゃなくて女友達の方からその事を聞いた。毅然を装い、お似合い!おめでとう!って言った。
ダウト。実際はめちゃくちゃショックで、同時に色んな感情が込み上げてきた。
なんで私に最初に言わないの?てか私とふざけあってる間にもちゃんと好きな女いたんだ何も言わなかったじゃん、どうせなら私の知らない子が良かったな、実は両思いなのにお互い言い出せないだけとか思い上がっていたのは私だけだった?あ、Nと付き合うとかありえないって言いすぎた?いやあれは本音じゃないよ、てかこれから気軽に連絡できないじゃん、私はやっぱり恋愛対象外だったよねえ…
なんて今から言ったらもう後出しジャンケンになるし、そっと心に閉まって見守っていこーってそう決めた。その方がきっと平和だ。だってマイメンだもん。
それからちょうど3年経つ。
今まで頻繁にあったLINEも電話もパタリと消え、1年に1回会うか会わないかの距離感となった。遊んでる感出してた割に実はかなり一途で誠実な男だった。
その間私は何回か本気で恋をしたが、どれも実ることはなかった。どの話もNは真剣に相談に乗ってくれた、もちろんマイメンとして。耳が痛くなるようなことも「俺とお前の関係だから言うけど」って前置き付きでぶつけてくれた。そんな前置きされたら私だって「さすが私のマイメン、分かってんじゃん」としか言えない。
この前久しぶりに友人とNと3人で会って飲んだ。
1年ぶりに会っても阿吽の呼吸で行われる漫才みたいな会話は健在だった。やっぱ楽しいなーって思ってたらNが「俺、今彼女のことめっちゃ好きで将来的に結婚してえって思ってる」と言った。もちろん私は「幸せそうで何よりだわ」と言った。そしたら、「お前にもほんと幸せになって欲しいわ」とか言ってきた。うるせえ。
女友達がインスタにあげるNとのデート写真を見る度にまだ胸がちくりと痛む。
別にもう付き合いたいとか好きとかは全く思ってない。でもきっと結婚したって聞いたら私はすっごく寂しくなってしまうんだろう。
だってそうなったらNはもうマイメンとは呼べなくなるから。
私はその日が来るのが少し怖い。
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