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【映画鑑賞】「ルックバック」
押山清高監督によるアニメーション映画「ルックバック」。この作品は、「チェンソーマン」などで知られる藤本タツキが2021年に発表した長編読み切り漫画を映像化したものである。
【ストーリー】
物語は、活発で漫画を描くことが得意な藤野、不登校で内向的だが独特の画風をもつ京本、という2人の少女の交流を軸に描かれる。
藤野は小学校4年生のときから学校の新聞に4コマ漫画を載せていて、その才能が周囲から評価されている。
しかしある日、同じ新聞に掲載された京本の4コマ漫画の画力に衝撃を受け、そこから必死に絵の勉強を始める。
だが、京本との差は埋められず、6年生の途中で漫画を描くことを諦めてしまう。
ところが卒業式の日に、担任教師から頼まれて京本の家に卒業証書を届けにいった藤野は、そこで京本自身から「ずっとファンでした」と告白されるのだ。
その後、2人は漫画の共同制作をしながら友情を育んでいく。そして、高校の卒業を間近に控え、ついに週刊誌での連載が決まるのだが・・・。
「創作をする理由」「友情と自立」など、この作品の「意味づけ」をすることは様々に可能である。
京都アニメーション放火殺人事件やコロナ禍の閉塞感が、この作品に少なからぬ影響を与えているのだろうと思う。
また、タイトルの「ルックバック」には、京本が藤野の背中(back)を見続けてきたという意味も込められているに違いない。
だが、そうした「意味づけ」は止めて、英語の“look back”に「振り返る」「回想する」という意味があるように、この58分間の映画を観た者が、
(自分は何かに対して真剣に取り組んできたのだろうか?)
(大切な人とどのように関わってきたのだろうか?)
ということを「自分ごと」として“look back”するための作品なのかもしれない。
・・・いずれはDVDやBlu-rayなどで視聴することもできるのだろうが、できれば映画館の大きなスクリーンで観ることをお勧めしたい作品である。
京本から「ずっとファンでした」と告げられた後、雨の降る田舎道を歩く藤野の足取りがスキップになり、やがて走り出すシーン。このシーンを見るだけでも、映画館に足を運ぶ価値があると思う。