立田 順一

横浜市在住。教育関連のことを中心に書いていきます。

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45歳・教員の「越境学習」 ~日本財団での1年間~(1)

突然の電話「立田さんには、4月からの1年間、企業等への派遣研修に行っていただきます」  教育委員会の担当者から学校に電話がかかってきたのは、3月中旬のことだった。  私は大学を卒業後、すぐに横浜市立小学校の教諭として働きはじめた。それから20数年間、何度か市内での異動はあったものの、小学校以外の職場で働いたことはない。私にとって、その連絡は晴天の霹靂だった。  と言いたいところだが、予感がまったくなかったわけではない。当時の横浜市教育委員会では、毎年、副校長昇任試験の合格者の

    • 啐啄同時

       先日、ある研修会で「啐啄同時(そったくどうじ)」という言葉を久しぶりに聞いた。  この四字熟語のうち、「啐」は雛が孵化するときに殻の中で鳴くこと、「啄」は母鳥が外から殻をつつくことを意味する。  雛が殻から出ようとする時期と親鳥が外側から突くタイミングが一致すると、雛は安全に誕生することができるのだそうだ。  禅宗では、この「啐啄同時」と同じように、師匠と弟子の呼吸が一致するときに悟りが得られるのだとされてきた。  そこから転じて、師匠と弟子の間で技を伝承するための

      • 「50-50」

         ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が、19日(日本時間20日)のマーリンズ戦で3打席連続の本塁打を含む6安打10打点2盗塁を記録し、メジャー・リーグ史上初の「50-50」(1シーズンでの50本塁打・50盗塁)を達成した。  前日までは48本塁打・49盗塁だったが、1試合で3本塁打・2盗塁を上積みしたことにより、記録を「51-51」にまで伸ばしている。  もしも、残り数試合になるまで記録達成ができずに足踏みをしているようならば、 「大谷選手が偉業を達成できるかどうか

        • 「バーチャル」か「リアル」か

           横浜の市立学校では、「グローバル人材の育成」という枠組みのなかで「XRやメタバース」の活用を進めようとしている。そのことに関しては、前回まで3回にわたって紹介をしてきた。  ・・・横浜市教育委員会では、こうした「バーチャル」な取組を進める一方で、「リアル」の面でも「グローバル人材の育成」に取り組んでいる。  その取組の一つが、今月23日(祝)に「みらとみらいエリア」で開催される“Yokohama English Quest”である。  横浜市立小中学校の児童生徒を対象

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        45歳・教員の「越境学習」 ~日本財団での1年間~(1)

          学校教育におけるXRやメタバースの活用(下)

          (前回のつづき)  横浜市内の各モデル校には、利用頻度が少なくなった「PC教室」などを転用して「メタバース教室」が設置され、今年度の下半期から本格的に活用される見通しだ。 【みなとみらい本町小学校】  開校7年目を迎えた同校は、当初からSDGsなどに取り組んでおり、ユネスコ・スクールにも認定されている。  モンゴルの学校との交流をはじめ、これまでの取組にXRやメタバースを加味することで、さらなる充実を図っていく見通しだ。 【西金沢学園】  9年制の義務教育学校である

          学校教育におけるXRやメタバースの活用(下)

          学校教育におけるXRやメタバースの活用(中)

          (前回のつづき)  横浜の市立学校では、「グローバル人材の育成」という枠組みのなかで「XRやメタバース」の活用を進めようとしている。今年1月の記者発表資料によれば、その概要は次のとおりだ。  各モデル校の校内には、利用頻度が少なくなった「PC教室」などを転用して「メタバース教室」が設置されることになっており、今年度の下半期から本格的に活用される見通しだ。  ちなみに、「メタバース教室」の機能等は次のとおりである。  また、連携企業への業務委託にあたっては、教育委員会から

          学校教育におけるXRやメタバースの活用(中)

          学校教育におけるXRやメタバースの活用(上)

           昨日(9月15日)は、東京の桜美林大学・新宿キャンパスで開催された「未来の先生フォーラム2024」のなかで、東京学芸大学が取り組んでいる「学校教育におけるXRやメタバースの活用」についてシンポジウムと体験会を実施した。  ちなみに、「XR(クロスリアリティ)」は「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」など、現実の物理空間と仮想空間を融合させて、現実では知覚できない新たな体験を創造する先端技術の総称である。  シンポジウムでは、プロジェクト・リーダーの

          学校教育におけるXRやメタバースの活用(上)

          「アウェイ」でのアウトプット体験

           今日(9月15日)は、東京の桜美林大学・新宿キャンパスで開催された「未来の先生フォーラム2024」に参加してきた。  昨年度から関わっているプロジェクトの一員として、活動の一端を報告するためである。  内容の詳細については次回に報告することとしたい。  今回、 ・自分にとって「アウェイ」の環境でアウトプットをする機会に恵まれたこと ・全国各地から登壇者や参加者が集まる大きなイベントの雰囲気を体感できたこと  は、貴重な経験になったと思う。  明日(9月16日)は「敬

          「アウェイ」でのアウトプット体験

          「やさしさ」の正体

           私が中学2年生のときの担任は、厳しいということで評判のベテラン女性教師だった。4月の始業式で担任が発表されたときには、「ハズれだ」と思ったものだ。  一方、隣のクラスの担任はやさしそうな若い男性教師だったので、正直言ってうらやましかった。  ・・・評判に違わず、私の担任教師は厳しかった。生徒に対して手を上げるようなことはなかったが、毎日のようによく響く声で叱責された。特に、私たちが手抜きをしたり言い訳をしたりすると容赦がなかった。  耳の痛いことをズバズバ言ってくるこ

          「やさしさ」の正体

          「ラブ・ストーリーは突然に」?

           横浜の伊勢佐木町を歩いていたら、「ジンギスカン料理」をメインにしたこんな酒場ができていた。 「東京ラムストーリー」という店の名は、1990年代に一世を風靡したドラマ「東京ラブストーリー」をもじったものだろう。 「東京ラブストーリー」は、柴門ふみによる同名のマンガをドラマ化したもので、1990年代のトレンディドラマを代表する作品だといえよう。  また、小田和正による主題歌「ラブ・ストーリーは突然に」は、毎回クライマックスシーンで印象的に流れ、ドラマの人気と相まって大ヒッ

          「ラブ・ストーリーは突然に」?

          分断か、それとも・・・

           2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件では、ハイジャックされた4機の旅客機がニューヨークの世界貿易センタービルや首都ワシントン郊外の国防総省などに激突し、およそ3000人が犠牲となった。  ・・・あのテロからの23年間、世界は確実に分断の道を歩んできたように感じる。 地政学的対立  米中関係の緊張やロシア・ウクライナ戦争など、一部の大国間の対立が激化している。これによって、経済的なブロック化や軍事的な対立、駆け引きが進行しているという一面もある。 経

          分断か、それとも・・・

          寄らば「林檎の樹」の陰

           Apple社は今月9日(米国時間)、新型スマートフォン「iPhone16」を発売すると発表した。日本のApple Storeでは、今月13日の午後9時から販売予約を開始するという。  ・・・同社が「iPhone」の新機種を出すたびに話題となるのは、日本のスマホ市場における「iPhone」の占有率である。調査によって多少の違いはあるものの、どうやら日本のスマホ・ユーザーのうち「約7割弱」が「iPhone」を選んでいるようだ。  全世界的なシェアだと「Android」が約7

          寄らば「林檎の樹」の陰

          「決める人」を「決める」 

           朝日新聞・日曜版の「朝日歌壇」「朝日俳壇」には、読者から寄せられた短歌と俳句が掲載されている。  それぞれ、日本の代表的な歌人・俳人の4名ずつが投稿作品の中から秀作を選び、解釈や評価を加えるという構成になっている。  趣味で短歌や俳句をやっている人にとって、この「朝日歌壇」「朝日俳壇」に作品が載るのは名誉なことらしい。  ちなみに、複数の選者から選ばれた作品には冒頭に「☆印」がつけられるのだが、それは極めて稀なことだ。選者によって好みやこだわりが異なっているからなのだ

          「決める人」を「決める」 

          マングースたちと『失敗の本質』

           戸部良一らによる『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(中央公論新社)が出版されたのは1984年のことだ。  同書は、第二次世界大戦における日本軍の戦略的失敗の分析を通じて、組織における失敗の本質や、意思決定の過程に潜む問題点を明らかにしたものだ。その具体的な問題点とは、 ・中長期的な目標の不在 ・組織内の対立(たとえば、陸軍と海軍) ・合理性よりも職階や人間関係、その場の空気を重視した組織文化 ・情報収集や情報伝達の不備 ・過度な精神主義 ・過去の成功事例に依拠した楽観的

          マングースたちと『失敗の本質』

          「海釣り」と「地引網」 

          「海釣り」が大好きな知人の話によると、珍しい魚や大物を釣るためには入念な準備が必要になるらしい。  まずは、狙いを定めた魚が棲息しやすい水温、潮流、深さなどを調べて、条件に合致した釣り場所を見つけなければならない。  また、そうした魚は特定の餌にしか興味を示さないことが多いので、それに合わせた餌やルアーを準備する必要もある。  さらに、早朝や夕方以降などの特定の時間帯に動きが活発になる魚もいるので、そうした習性に合わせて行動することも求められる。夜釣りが盛んなのもそのた

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          「サッカー王国」の不振

           サッカーW杯の2026年大会に向けて、アジア地区の最終予選が始まった。この予選はアジア以外の地区でも行われていて、南米では世界屈指の強豪国であるブラジルが苦戦を強いられているという。  南米予選には10カ国が参加し、各国がホーム&アウェー方式で18試合ずつを戦って順位を決める。今大会から本戦への出場国が32から48に増えたことに伴い、南米からの出場枠も前回の4.5から6.5に増加した。上位6チームが無条件で本大会への出場権を獲得し、7位のチームは大陸間のプレイオフへ回ると

          「サッカー王国」の不振